失われた30年、復活せぬ日本企業と米国の決定的差 問題にするのを避けてきた不振の最大原因とは?

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しかし私は、バブル崩壊後の大企業の中に入って事業の再生を手がけるようになってから、その手順に問題があることに気づいた。改革案作りをするのにまず「戦略」から入ると、それはいかにも当たり前の改革手法に見える。けれども、実はそれによって、業績不振を生み出しているもっと根の深い問題を見過ごしてしまい、会社の本当の元気回復を先送りにしてしまいかねないことに気づいたのである。

もっと大きな問題とは、「ビジネスプロセス・組織」の問題である。多くの幹部や社員が、事業不振は他の部署や個人のせいである(自分だけはちゃんとやっている)という心理を抱いている。本来なら経営判断は明るい昼間に「正しい、正しくない」の議論をきちんと行って決めるべきだが、実は組織の陰ないしはアフターファイブに「好きか、嫌いか」の感情を伴う「組織の政治性」がはびこっているのだ。

事業再生専門家というのは、経営がかなり悪くなり、もうあとがないという状況が見えてきてから、依頼を受けるのが常である。行ってみると、ほぼすべての企業で歴代の経営者が改革と称するものを行ったことがあり、ほとんどが「戦略」の問題を表層的にいじり回して、結局は大した効果が出ずに短命の改革で終わり、その結果、社内にあきらめが広がっているというパターンを起こしていた。

そのような会社では、顧客と競合を意識して最善の戦いをするための「ビジネスプロセス」や「組織体制」が崩れているのがほとんどだ。それが会社の根っこに潜んでいる最大の不振原因なのだが、日本企業の多くがバブル崩壊以降の30年間、それを問題にすることを避けてきた。

事業の不振の原因は2つに分けて考える

どうすればいいのか。私は事業の強さ復活を狙う再生プロジェクトを繰り返すうちに、事業の不振の原因を、あえて大きく2つに分けるフレームワークに行き着いた。「戦略」(会社の外に目を向けた戦い)と、「ビジネスプロセス・組織」(会社の内部に目を向けた戦い)をまずはいったん分けて、病気の原因と改革法を整理するのである。

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どちらも最終的には市場での勝ち負けに影響している。両者は深くつながっており、従来はこの2つを含めて「戦略」と総称することが多かった。

ところが、バブル崩壊後の日本企業の活性化に取り組み始めてから、私は改革の「入り口」としては、この2つを明確に分けて考えることが重要だと気づいた。

不振企業では、まず社内のビジネスプロセス・組織の病気を抜本的に治して「戦う体制」を組み立て直す。つぎに、その結果として前よりも小ぶりで機動力の上がった事業単位それぞれにおいて、あらたに抜擢した経営者人材が、最適と思える戦略を個別に立案する。

改革の後半では、レベルアップしたビジネスプロセス・組織と、市場に向けた新戦略を合体させ、総合的な改革を進めていくという手順である。

「戦略」と「ビジネスプロセス・組織」の2つはそれぞれに対処するフレームワークが異なり、社内の組織力学が異なり、実行するときの具体的行動も異なる。その意味で、この2つをまずは峻別して組み立て、そのあと矛盾が出ないように2つを整合ないし融合させながら改革を進める手順が大切なのだ。

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