失われた30年、復活せぬ日本企業と米国の決定的差 問題にするのを避けてきた不振の最大原因とは?

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ここで、「事業革新のメガトレンド」から得られる教訓を、現実直視のストレートな表現でまとめてみたい。

①日本人は経営の「知的創造」で負けた。

日本の経営はメガトレンド前半30年間で素晴らしい経営成果を出したが、長い年月をかけてアメリカ人によって解析され、見破られた。日本人は商品開発には熱心だったが、同じくらい重要な「経営手法の開発」には十分な金も時間もかけなかった。経営の新しい「論理化・敷衍化」で後手に回り、自ら先手を打つ改革を推進できなかった。

②日本人は「個人の経営的力量」で負けた。

内向き志向が強く、サラリーマン化が進み、会社の大改革や世界市場で勝ち抜くために個人として必要な「経営リテラシー」「経営フレームワーク」を、自らの成功失敗体験の中で磨いていく機会から遠ざかってしまった。

③その結果、近年、世界の事業革新のメガトレンドの変化がますます加速しているのに対して、日本人の多くは後から追いかけることしかできなくなっている。

今後、日本の経営を革新するためには、「組織問題」がつねに「戦略」と抱き合わせで扱われなければならない。当たり前に聞こえるだろうが、これが簡単ではない。社長自らが毎日、事業のことと同じ熱心さで、「組織の劣化」に対して「今そこにいる人々」の目を輝かせる組織を保つには何が有効かを考えているだろうか。事業戦略と組織問題をセットにして、改革を試し続ける必要がある。

不振企業で必ず直面「経営者人材の枯渇」「組織劣化」

この後は、日本人がこの状況から抜け出るための参考として、私が過去30年間、経営者ないしターンアラウンド・スペシャリスト(事業再生専門家)として試みてきた改革手法について述べる。

バブル破綻後に不振に陥った上場企業に行くと、例外なく直面したのは「経営者人材の枯渇」「組織劣化」の問題だった。改革に背を向け、時に背後から改革者に弾を撃つ人がいる組織を、いかに新戦略に向けて束ねていくのか。その手法(フレームワーク)を編み出すために、苦渋の試行錯誤を重ねた。

不振企業の元気復活のためには、誰しも、まず通常の「戦略」の観点から、いま追っている事業戦略が正しいかどうかをやり玉にあげる。私のビジネス人生でも、初めはそれが当たり前の手順であった。

ここでの「戦略」とは、市場競争に対する自社の戦い方、社員から見れば会社の「外」に向けた打ち手を点検し、それを斬新でより有効な内容に組み立て直すことを意味している。

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