日本人は日本の「寄付文化の貧弱さ」を知らない 米国は1人当たり約10倍、だが地道な取り組みも

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一般に寄付というと経済的に恵まれない人や被災者への生活支援などを思い浮かべる人が多いでしょうが、こちらの支援はアーティストの活動が対象。実は世の中に良質なアートを継続的に送り出していくためにも支援は大いに必要とされているのですね。とくに日本では「アートで食べていける人」はごくわずか。ダイナースクラブはそこに着目しました。

アーティストや聴衆を育成する重要な取り組み

東京藝術大学(写真:LEON編集部)

具体的には、日本の芸術教育の総本山である東京藝術大学と連携し、同大学音楽学部の学生と卒業生たちに上質な演奏の場を提供するべく、年間を通して大小さまざまなコンサートを開催するほか、同大学音楽学部が行う「音楽アウトリーチ活動」(※)を支援するファンドも運営しています。また、コロナ禍の影響で若手演奏家の演奏機会が激減している状況の中、彼らの演奏や活動を紹介するYouTube動画を制作する企画も実施しました。

プロジェクトの運営を支える音楽プロデューサーの坂田康太郎さんによれば「クラシック音楽だけでなく、アートを語れること、理解し支援していること等は、欧米ではビジネスマンとして、教養人としてのマストスキルです。しかし日本では、クラシック好き、クラシック通となると、一部のマニアとみられがち。生活の中に文化・芸術を取り込む余裕がないというのが実情です。日本のピアノ、弦楽器、オペラ歌手もアーティストはワールドクラスの実力があるので、国や社会がもう少し理解を深め、支援をしていくべきと考えています」とのこと。

また、東京藝術大学の佐野靖副学長も「アートやアーティストへの支援が欧米に比べて極めて貧弱な日本にあって、本件はとてもありがたいプログラムだと評価します。若いアーティストにとっても非常に励みになりますし、アーティストおよび聴衆を育成するという意味でも重要な取り組みだと思います」と語っています。

※音楽アウトリーチ活動とは、東京藝術大学の学生が、学内やコンサートホールの舞台という従来の枠組みにとらわれず、ほかの学校や福祉施設、ロビーなどさまざまな場所に赴き、普段、生の音楽に触れる機会のない方へ音楽を届ける活動。

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