世界から注目!「海藻スイーツ」の大いなる可能性 伊勢丹「サロン・デュ・ショコラ2023」に初出店

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そんな日本の食文化の衰退や、海洋環境の破壊を食い止め改善したいと活動する「シーベジタブル」は、海藻の種苗培養養殖の研究者や海藻調査、分析の第一人者、水質分析や整備開発の専門家が集まった“海藻オタク”集団だ。日本全国の海藻と海の状況を調査、研究し、消えつつある海藻から種を採取して、海面養殖をして復活させるなどの活動を精力的に行っている。激減している藻場面積数を復活させ、生態系の豊かさを取り戻し、漁業に関わってきた人々の雇用の再生も可能にしている。

シーベジタブルが目指す未来

例えば瀬戸内海では、もずくを育てるプロジェクトがスタートしているという。

「瀬戸内の海では海苔の養殖が盛んだったのですが、近年激減しています。香川県だけで10億枚採れていたものが、2016年には4億枚に、そして今はさらに減っている。十数年前までは海苔漁師の家が100軒以上あったのに3軒になってしまった漁協もあるなど、状況は深刻です」と友廣氏。

海苔のタンパク質含有量は重量の約40%にもなるが、つまりそれは海からたくさんの栄養を吸収する必要があるということだ。だが、かつて日本で公害が社会問題になって以来、排水の規制を厳しくし続け、近年の技術向上により下水処理能力が飛躍的に向上した。その結果、海の水が「やせてしまった」ことも原因の一つと考えている。

高知県安芸市のすじ青のり生産現場。この地下海水を使った陸上での栽培技術を独自に開発したところからシーベジタブルの活動が始まった(写真:著者提供)

「でも、ワカメなら海苔の5分の1、もずくなら10分の1の栄養で大丈夫なんです。もずくは1ヘクタールで約500kg養殖できる。某コンビニチェーンが販売するもずくは年間1000トン。仮に同じくらいの量の販路が新たにつくれるとすると、2万ヘクタールの瀬戸内の海に海藻を復活させることができ、海の生態系を育みながら、漁師さんたちにも再び仕事が生まれるんです」(友廣氏)

海藻から種を取り出し、漁師さんに海面養殖の技術を提供し栽培してもらい、できあがった海藻を買い取って販売する。そうして海藻をめぐる日本の食文化を復活させ、世界の人々に海藻をおいしいと思って食べてもらう。シーベジタブルが目指す未来だ。

「それって、次の人類が生き延びていくために活用すべき海藻というものを、世界の人々に知ってもらうという意味がある。なんて言ったらカッコ良すぎですかね」と笑う友廣氏なのだった。

宮本 さやか フードライター

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みやもと さやか / Sayaka Miyamoto

1996年より、イタリア・トリノ在住。イタリア人の夫と娘と暮らしつつ、ライター、コーディネーターとして日本にイタリアの食情報を発信する。一方、イタリア料理教室、日本料理教室、そしてイタリアの人々に正しい日本の食文化を知ってもらうためのフードイベントなども行っている。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」

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