バリアフリートイレ問題、7割が「待たされた経験」 一般トイレに機能を分散「誰もが使える場所」に

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長い歴史の中で国内外のさまざまな組織・団体などの努力によって、誰もが暮らしやすい社会づくりに向けた改善が繰り返され、これらの取り組みの一環としてトイレのバリアフリー化も進んでいきます。

ここで、1990年代における車いす使用者用のトイレの課題を紹介します。国の政策と連動して順調に車いす使用者用トイレが広がったわけではありません。車いす使用者用トイレはスペースが広いこともあり、長い時間滞在するだけでなく住み着いてしまうことや喫煙することなどの目的外使用が問題になりました。

これらの問題への対応方法として実施されたことが「施錠」だったのです。通常は鍵をかけておき、必要な人にのみ開錠することで目的外使用を回避しようと考えました。しかし、この方法は上手くいきませんでした。

その主な理由として挙げられたことは、夜や土日は使用できないことや、誰が鍵を持っているかわからない、鍵を開けてもらうまで我慢できないなどでした。誰もが余裕をもってトイレに行くわけではありませんし、体調不良で急にもよおすこともあります。そもそも誰かにお願いしないとトイレを使えないということ自体が好ましくありません。

利用頻度を高めて目的外使用を抑止

続いて考えられた対応策が「トイレの多機能化」です。当時、車いす使用者用トイレの利用頻度はそれほど高くありませんでした。「いつも空いている」という印象があり、その状態がトイレ以外の目的で使用されてしまうことにつながったのです。

そうであれば、利用頻度を高めることが必要になります。さまざまな人が頻繁に使い、街ゆく人の視線も集まることが目的外使用の抑止につながると考えたのです。

前述のハートビル法と交通バリアフリー法、そしてバリアフリー法によって多機能化したトイレも普及していきます。時代の変化とともに、ベビーカーでの子連れや異性の介助、オストメイト、トランスジェンダーにとっても使いやすい多機能なトイレはニーズが高まっていきます。

もともと多機能なトイレは車いす使用者が自由に動作できることを想定しており、なおかつさまざまな設備を入れる必要がありますので、それなりの広さが求められます。その結果、各トイレブロックに1室もしくは2室設けるのが精一杯となり、ニーズに対して供給が追いつかない状況になってしまったのです。

国土交通省の調査では、付き添いが必要な人に対して多機能トイレが使用中のため待たされた経験を調査したところ、「よくある(18.5%)」「たまにある(51.1%)」となり、合わせると69.6%の人が待たされた経験を有していることがわかりました(次ページ図)。

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