退職時点で収益が出ていたのは不動産業とnoteマガジンの売り上げだったが、その後、Voicyの放送にスポンサーがついたり、ヨガのオンラインレッスンを始めたり、著書を出版したりと、いろいろなところに蒔いた種が、仕事につながり始めた。
2020年にはヨガスタジオをオープンし、2021年からはスキンケア商品のプロデュースや販売にも挑戦。うまくいかなかったこともあるが、その都度、軌道修正しながら、どのような経験からも学びや気づきを得てきた。
2年間のサバティカルタイムを終え、2022年4月からは「オンライン上の居場所(サードプレイス)」について研究する大学院生になった。そもそもは仕事の“種”を見つけ、育てるつもりの2年間だったが、アウトプットを続けるうちに、もっと深く思考する時間と環境が欲しくなり、大学院で学ぶという新しい夢を見つけたのだ。
「例えばVoicyやオンラインヨガのコメント欄が、フォロワーさん同士でコミュニケーションを楽しむ場になっていると感じるときがあります。その方たちはきっと、提供する物やサービス以上の価値を、その場に見出してくれているのではないか、と思うんですね。
その価値とは何かを突き詰めていくと、実社会で多重な役割を担っている方たちが、個としての自分に戻れる何か、もしくは、自分が自分でいられる何かがその場にはあるのだろうと考えています」
大学院では、一緒に学ぶ若い人たちや多様な専攻出身の人たちとの交流などから得るものが多い。
「修士課程1年目の学生という立場で、レポートの提出に追われるようなプレッシャーもあり、これまでの社会人生活で凝り固まっていた思考の癖が、どんどん削ぎ落とされていくようなんです。社会人を20年ぐらい続けてきた人は、まったく違う環境で、自分が一番下になる修行みたいな経験をしたら世界が変わるかもしれませんね」
すべての始まりは自分自身が変わったことから
Voicyでは著名な方々と対談する機会もあり、まったく想像もつかなかった世界に自分がいるような感覚もある。
「でもそれは、40歳の壁を前に価値観や考え方が変わり、そのことをアウトプットし続けた結果、さまざまな出会いに恵まれただけ。全ての始まりは、自分自身が変わったことから。よくはるさんだからできたんでしょう?と言われますが、そうじゃない。これは誰にでもできることなんだよ、ってお伝えしたいと思っています」
試行錯誤は続いていて、40歳の壁はまだ越えている途中。だが気づけばスルッと壁を抜けているのではないか、という予感がある。
「人生は一度きりなので、心のどこかで何らかの壁を感じている、もしくは、壁だと認識はしていないけれど、何となく違和感があるなら、それはいったい何なのかを考えてみると、自分の人生を主体的に生きるヒントが見つかるのではないでしょうか。私はこれからの人生で、次に続く人たちへ生きやすくなるヒントを渡していきたい。それが居場所づくりなのか、ハブ的存在になることなのかを考えている最中です」
他人の物差しではなく、自分の尺度で、人生を生きること。その大切さを、今日も尾石さんは語り続けている。
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