だが「当時の私は、“子どもをベビーシッターに何時間預けられるか”や、“延長保育をフルで使ったら会議に何時まで出られるか”などばかり考えていました。そうまでしないと働けない会社って、そもそもおかしい、という観点が抜けていて、仕事だから当たり前だと思っていました。働き方に対する違和感はこの頃から絶対あったのに、ちゃんと目を向けようとはしていませんでした」。
新しい挑戦で変わっていく自分
ところが34歳で次男を出産すると、どうにもならないことが増えた。キャリアアップには転勤が必要なのだが、子ども2人の保育園やその後の就学を考えれば諦めざるを得ない。会社は好きだけれど、仕事にフルコミットできない現状、そしてキャリアの停滞に心はモヤモヤした。
そこで、会社にすべてのキャリアを賭けるのではなく、仕事とは違う視点を人生に取り入れてみようと、20代のころから趣味で続けていたヨガのインストラクター資格を取ったり、副業として不動産賃貸業の勉強をして法人を立ち上げたり、新しい挑戦をしてみた。
するとさまざまな属性の人たちと出会い、多様な考え方や価値観に触れる機会が増加。仕事に自分の人生を合わせるのではなく、なりたい人生に合わせて仕事をデザインする生き方もあるのだと学んだ。
また、その後の人生に大きな影響を与えたのが「言葉のアウトプット」だった。きっかけは、働く女性のキャリアを考えるオンライン勉強会に参加した際、主催者から自分の考えを整理し、思考を言語化するためにブログの開設を勧められたこと。「最初は怖い気持ちもあったし、投稿を続けられるかも不安で、何より私にはすごくおこがましいと思っていました」。
仕事で文章を書く機会は多かったが、いざブログに書こうとすると最初は300文字で精一杯。それでも少しずつ続けていくと、自分の考えを言葉にするのが楽しくなってきた。同時に思考が整理され、無意識に持っていた興味や関心、問題意識に気づくきっかけにもなった。
ブログは匿名で顔出しをしていないので心理的な障壁は下げられた。また、同じような属性の人たちと「いいね!」や「コメント」で“牧歌的なやりとり”をして、励まされたり、いろいろな情報をもらったりして、世界が広がっていった。
「当時は気づいていなかったのですが、会社員・妻・母以外の新しい人格を、ブログを通じて見つけていたのだと思います。実社会で担っている役割や肩書を気にせず、一人の人間として考えをアウトプットすることで、自分を取り戻していたような感覚です」
育休が終了し、職場復帰してからもワーキングマザーとしての発信を続けたが、執筆時間の確保が難しくなってきたところで、音声配信プラットフォーム「Voicy」の存在を知った。
それまでも、スマートフォンの音声入力機能でブログに書く素材を集めていたので、音声での発信なら原稿化せず、そのまま世に出せるのがメリットだった。Voicyのパーソナリティーは審査で選ばれるが、ブログなどでの実績が評価されたのか無事に合格し、自分の放送を持てるようになった。
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