――日本ではフェミニズムの議題、たとえば「女性の身体は大切だ」と言うと、「では男性は大切ではないのか」といった二極化した議論になりがちです。
韓国でもそうした傾向があるようですし、実は台湾でもあります。しかし月経のない人でも、例えば愛する人や母親・姉妹・友人など必ずどこかで自分に繋がる問題です。なんといっても約50パーセントの人に直接関わることですから。「月経は自分ごと」は、私たちの大切なテーマのひとつです。
博物館の参観者の4割は男性で、年齢も小さな子供から90歳代のお年寄りまでさまざまです。賛成や反対にかかわらず、誰でもここに来て議論に参加できるというのが、私たち「小紅帽」が堅持している一番の行動基準ですね。
座談会をする場合も、参加者のジェンダーや年齢に制限は設けてないし、したらダメな質問もありません。「おしっこと経血は同じ穴から出るのですか?」と聞けば多くの人は「なんでそんなバカな質問を」と思うかもしれません。
でも、「バカな質問」だなんてとんでもない。それについて知りたいと思っているのが男性とも限りません。女性でも自分の膣や子宮と卵巣がどのように関係しあっているのかよくわかっていないことも多いのです。自分の身体についてよくわからない、わからないものは怖い、怖いから知りたくないという悪循環ですね。
慣習に変化を起こすためにどうすればいいか
――日本ではソーシャル・アクティビストが攻撃を受けやすい現状があります。
私はイギリスやオランダにいた経験がありますが、そのときの印象と比べれば台湾の人々の反応はとても直接的で素直、好奇心旺盛です。すぐに「だめ」と決めつけず「ちょっと見に行ってみよう」「ちょっと様子を見てから判断しよう」と考える。
確かに私たちが問題にしているジェンダーやダイバーシティ、インクルージョンの議題は、激烈な反応や反対を呼ぶこともあります。小紅帽にも私個人にも攻撃的で女性差別的なメールはつねに来るし、それに対して「やめてほしい」と団体で声明を出したこともあります。
しかし、いくら「やめて」と訴えても、完全に遮断することは不可能です。そこで、そうした異なる声にどう耳を傾けるかを常に考えてきました。
例えば、攻撃してきた本人を公開の議論の場に招いて、なぜそう考えるのか、私たちを攻撃するのかを聞いたこともあります。それでわかったのは、面白いことに彼らの多くは私たちのことをたいへん気にかけている応援者だということです。私たちの猛烈なファンで、気になりすぎて、よくなってほしくていろいろ言いたくてたまらない。
また、誤解に基づいていることも多々あります。「自分が責められている」と誤解し、それに対する防御反応から攻撃的になる。ジェンダー問題全般にいえることですが、攻撃する人の多くは自分が加害者として扱われ、責められていると思い込んでいます。
そこで私たちは、月経に関する問題は「誰かのせい」ではなく「構造」の問題であること、共に暮らす私たちが長い間受け入れてきた慣習に変化を起こすにはどうすればいいか一緒に考えよう、と伝えています。
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