世界唯一の「月経博物館」が台湾にできた理由 創設者であり、台湾の若きリーダーの1人ヴィヴィ・リン氏

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創設した「小紅厝月経博物館」とヴィヴィ・リンさん(写真・栖来ひかり)
ヴィヴィ・リン(林薇、Vivi Lin、24歳)を初めて知ったのは、コロナ禍が猛威を振るいだした2020年4月のことだ。WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が台湾を名指し「インターネット上で人種差別的な攻撃を受けた」と発言したのに対し、当時イギリス・スコットランドのエジンバラ大学公衆衛生学部に留学中だったヴィヴィは、テドロス事務局長宛てに「事実は違う」としたビデオレターをYouTubeで公開した
動画は世界中に拡散、7日間で170万回以上再生され、日本でも話題となった。その後、とあるメディアの企画で台湾Z世代の代表的な人物を探しているとき、台湾デジタル相のオードリー・タン氏が推薦してくれたのが彼女だった。
ヴィヴィは台湾で初めて、月経をテーマに「生理の貧困」「生理の不平等」「生理の汚名化」といった問題に取り組む非営利組織「小紅帽 With Red」(赤ずきん)を2019年に創設。2021年には、イギリスの故・ダイアナ妃が設立し世界をよりよい場所に変えようと人道的活動・社会貢献する次世代リーダーに贈られる「ダイアナ・アワード(Diana Awards)」を受賞した。そして2022年夏、アジアで初の「月経」をテーマにした博物館「小紅厝月經博物館The Red House Period Museum」を台北市内にオープンさせた。
台湾の若きリーダーの1人と目される彼女に博物館の設立や小紅帽の活動などについて話を聞いた。

 

――テドロス事務局長へのビデオレターは、あなたを一躍有名にしました。

18歳まで、海外で勉強をするなど考えたこともなかったのですが、ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)に選出されました。UWCは、各国から選ばれた学生がともに学ぶことで国際交流と平和を考える制度です。そのおかげで、オランダそしてスコットランドの大学で学ぶことができました。

市場から寮に戻ると、同級生たちから「台湾はテドロス事務局長を攻撃しているの?」と聞かれました。即座にそれは誤解だと思ったし、実際に事実ではなかった。

テドロス氏の発言で、世界各国120カ国から集まっている同級生たちに台湾が誤解を受けるのは残念だし、それを私が解かなければという使命感に背中を押されました。少し経ったら、父母から連絡が来て「あなたテレビニュースに出てるじゃない!」って。本当に、それほどの反応を期待していた訳ではありません。

1人きりの活動スタート

――イギリスでは、どうして公衆衛生を学ぼうと思ったのですか。

私は台湾東部の宜蘭出身です。当時の宜蘭には総合病院がなく、遠く離れた病院へ通う高齢者の苦労を見て育ちました。また、物心ついたころから医学や科学にも興味を持っていました。小学校に入学すると「国境なき医師団」に憧れ、医療に従事すること以上に人道支援に携わる仕事に興味をもちました。

伝染病を勉強する過程で気づいたのは、公衆衛生とは医学だけでなく、政策や経済、教育と深く関わっていることで、病院だけで行われるのが医療ではないということでした。またジェンダー的な社会構造のために、女性は身体や心理的な健康に多くの問題を抱えています。

それを解決したいと考えて、2019年に設立したのが非営利組織「小紅帽 With Red」です。始めたときはまったくの1人きりで、オフィスも資金もないゼロからのスタートでした。

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