世界唯一の「月経博物館」が台湾にできた理由 創設者であり、台湾の若きリーダーの1人ヴィヴィ・リン氏

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――2003年にジェンダー平等教育基本法が施行されましたが、その影響もなかったのでしょうか。

その中に挙げられていた項目ですが、あまり問題視されず実地で見過ごされてきました。でも最近では、保健体育という教育分野だけでなく語学や文学、生物、科学、工学といった研究分野の学問と「月経」にまつわるソーシャルイシューをどう結びつけることができるかに興味を持つ学生も多く、台湾大学でそういったクラスも開講しています。

神様は月経を気にしない

――台湾社会は非常にオープンで先進的な一方で、とても伝統的かつ保守的な面を持っていますね。

この活動のおかげで台湾の多くの人がどれほど保守的かわかりました。「生理」「月経」と口に出すことさえはばかる人も多いんです。本当は、鼻水や汗と同じく身体から出てくる当たり前のものなのに。

――日本から台湾に来て、女友達の生理用品を普通に買ってくる男の子の話を聞いて、日本に比べて台湾はずいぶん生理について先進的だと思っていました。

台湾の場合、迷信など教育の不足を大きく感じます。例えばよく聞かれるのが「生理でも“拝拝(パイパイ)”してよいのか」という質問(※拝拝/パイパイとは、先祖や信仰している神様の像が祀ってある自宅の祭壇や寺廟に行き手を合わせたり焼香したりすること)。

そこで、最近は「月老」(※月下老人という道教の神様で、恋愛を司る神として若者にも人気がある)の廟と合同で月経にまつわる啓発イベントを行っています。また「月経の女性が参れば神様が怒る」「月経中はお参りはだめ」が本当か多くの廟で聞いて回りました。結局、具体的に禁止している廟はなく「神様はそんなこと気にしない」が結論です。

――月経をテーマにした博物館は世界で初めてですね。

今は世界唯一です。かなり昔、アメリカの産婦人科のお医者さんが自宅の一室を小さな博物館にしていたことがありますが、もう閉館しました。私たちが博物館を作りたいと思ったのは3年前ですが、相談を持ち掛けた誰もが「ありえない」と言いました。

――常設のビデオ映像の中で、「テーマは月経で壁一面に女性器の絵を描くなんてクレイジーすぎる!とびっくりした。でも工事を終えるころには、これは自然なもので、おかしなことは何もないとすっかり考えが変わった」という博物館の工事を手掛けた年配の男性の話が印象的でした。誰かがこの博物館を通して「変化」したエピソードはほかにもありますか。

毎日のようにありますよ。この地域は台北市でも歴史のある下町で、住民はかなり保守的です。博物館の工事中、近所の高齢の男性や女性が毎日のように覗きに来て「ここで何をするつもりなのか」と聞くんです。覗きには来るけど、怖がって中まで入ってこない。

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