流通量の1%未満「国産紅茶」が今、超進化していた イギリス「食のオスカー」で3つ星金賞の生産者も

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「自分が使う量はごくわずかですが、いい物なので新しい使い方を見つけられれば。無農薬で取り組まれているいい農家さんと知り合って、自分で仕入れて加工しています」

そして、これからはもっと「山の香りを取り入れてみたい」と抱負を語る。農園も自宅も山の中にあるため、自然に囲まれて四季折々の野山の草花や植物に触れて生活をしている。庭にレモングラスを植えてみたり、庭にあるニッケを使ってみたりと、おいしい紅茶作りは毎日の暮らしから着想を得ている。

「ヨーロッパはクレオパトラの時代から蒸留文化がありました。日本は水に恵まれていたのもあって蒸留文化はごく最近です。例えば、山に生えている野草は干してお茶にしたり、染めに使われたりしてきましたが、蒸留して成分と香りを抽出することはあまり取り組まれてきませんでした。身近な野山にあるものの香りや成分を抽出して、それを紅茶とうまく組み合わせて、新しいものを作ってみたいです。山遊びも大好きなので」

日本の国土の7割は山である。多くの可能性に満ちあふれている。

思い出に残る紅茶体験を「ティーマパーク」で

今後は、茶畑の風景も含めて楽しんでもらえるような場所を作っていきたいそうだ。お茶摘み体験や紅茶づくり体験、芳香蒸留水作り体験から、敷地の一角を利用してのグランピングやたき火などのレジャー体験と、紅茶を起点にいろんな楽しみができる「ティーマパーク」を目指しているのだという。

「紅茶は手もみなら1日で作れるので、ぜひ体験してもらいたいですね。あとは、家庭の庭に生えている桜の木、例えばお子さんが生まれたときに植えた記念樹を持ってきてもらって芳香蒸留水にするとか。思い出に残るようなことを楽しんでもらえたら」

冒頭に、国産紅茶は全国で流通しているものの1%に満たないと書いた。国産紅茶が増えるとさまざまな紅茶を味わえる楽しみが増えるだけでなく、国内各地の産地へ行き、より身近に紅茶を知って楽しめる可能性が増えてくるはずだ。そうやって産地の風景や製造工程を知った1杯の紅茶は、より味わい深いものになるに違いない。

お茶の花が咲く様子も愛らしい(著者撮影)
横田 ちえ ライター

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よこた ちえ / Chie Yokota

鹿児島在住。WEB・雑誌での執筆のほか、企業のオウンドメディア運営やパンフレット製作など幅広く活動。日ごろから九州を中心に全国あちこちを巡り、取材テーマを模索している。最近特に力を入れているテーマは離島や温泉。

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