7日で地球1周も思惑外れ「内弁慶」岸田外交の裏側 内閣支持率は最低水準のまま、問われる「説得力」

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そもそも今回の岸田流外交は、まる2日分の時間が専用機での移動に費やされたという。当然、随員や同行記者団は疲労困憊での帰国を強いられた。しかし、岸田首相は「最後まで元気いっぱい」(側近)で15日夜の帰国後、16日午前までを休養にあてただけで、同日夜から夜の会食を続けるタフネスぶりだ。

年明け外交出発の直前に親しい自民関係者が「体調」を尋ねた際に、「日ごろから鍛えているからまったく問題ない」と胸を張ったとされる岸田首相。しかし、23日からの通常国会での与野党論戦は「前臨時国会以上の厳しい展開」(自民国対)となるのは確実だ。

維新取り込みによる野党共闘の分断を狙う自民

もちろん、政府与党側も対抗策を練っている。17日には国会運営司令塔の茂木敏充・自民党幹事長が馬場伸幸・日本維新の会代表と会談し、「憲法改正や安全保障・エネルギー政策などの分野で連携を深めることで一致した」(自民国対)とされる。岸田首相と麻生太郎副総裁の意向も踏まえての「維新懐柔作戦」(同)とみられ、想定される国会論戦での野党共闘にくさびを打ち込んだ格好だ。

通常国会での与野党論戦は1月25日から3日間にわたる衆参両院での各党代表質問で本番入りする。ただ、代表質問は「双方が言いっぱなしで終わる」(自民国対)ため、30日から始まる予定の衆院予算委審議が岸田首相の正念場となる。

4月の統一地方選や衆参統一補欠選挙での「自民打倒」を狙う野党側は、「さまざまな醜聞を抱える問題閣僚の辞任要求や、旧統一教会問題での説明を回避し続けてきた細田博之衆院議長の責任追及で、政府与党を揺さぶる構え。

これに対し、岸田首相が売り物の「聞く力」を発揮する一方、防衛費や少子化対策にからむ増税問題で、「野党だけでなく国民を納得させられる説明力を発揮できるか」(自民長老)が春以降の岸田政権の命運を左右することになるのは間違いない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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