政局装う猿芝居?「防衛増税」時期先送りの不可解 高市氏らが反発したが、結局1週間あまりで収束
最後まで混迷が続いた臨時国会の最終盤に、岸田文雄首相が「独断専行」で打ち出した「巨額防衛費の財源を増税で賄う」との方針が、国民や野党だけでなく自民党内でも大炎上し、「防衛増税」政局の様相を呈したが、結果的に決着先送りの「妥協案」で短期収束となった。
この師走の騒動の舞台裏を探ると、「党内最大派閥の安倍派内の覇権争いが浮き彫り」(自民党長老)ともなる。このため与党内では「結果的に、政局を装った手の込んだ“猿芝居”だったのでは」(同)との冷ややかな見方が広がる。
「5年間の防衛費総額43兆円」とするように支持
永田町が政局がらみの騒ぎに沸いたのは、臨時国会会期末を前に岸田首相が唐突に打ち出した、相次ぐ“独断決定”がきっかけ。まず、2022度第2次補正予算成立を受けて、12月5日に2023~2027年度の5年間の防衛費総額を約43兆円とするよう関係閣僚に指示。
続いて、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題での被害者救済法に会期内成立のめどがついた同8日には、2027年度以降に必要となる年4兆円の防衛費増加分のうち1兆円強を増税で確保する一方、2023年度は増税せず、所得税については増税しない方針を表明した。
これを待っていたかのように、自民党税制調査会(宮沢洋一会長)はただちに、法人税、たばこ税、復興特別所得税(復興税)を増税の対象とする内部協議を開始。2037年までの時限措置だった復興税の活用では、上乗せ分の1.1%を復興財源、1.0%を防衛財源に振り分ける案を打ち出した。
徴収期間を延長することで「復興に必要な総額は確保する」(税調幹部)との理屈だが、これが被災地を先頭に猛反発を招いた。本来なら2038年になくなるはずの上乗せ分が延長される一方、1.0%分の使途を防衛費に限定(防衛特定財源化)すれば、「実態的には復興税を転用した防衛費増額のための所得増税」(安倍派若手)になるからだ。
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