政局装う猿芝居?「防衛増税」時期先送りの不可解 高市氏らが反発したが、結局1週間あまりで収束

拡大
縮小

宮沢氏が示した妥協案は、増税対象として法人・所得・たばこの3税を列挙する一方、増税時期を「2024年以降の適切な時期」として、最終決定を先送りしたのがポイント。岸田首相と打ち合わせ済みの打開策とされ、しかも、「萩生田氏も事前にシナリオを知っていたはず」(税調幹部)との指摘もあった。

これを受け、16日には与党が2023年度税制改正大綱、政府が防衛3文書改定を相次いで機関決定し、将来への火種はくすぶるものの、大きな混乱はわずか1週間あまりで収束した。

表情に満足感がにじんだ岸田首相

自ら問題提起し、大幅譲歩と見せかけて事態を収拾した格好の岸田首相は、16日午後6時からの官邸記者会見で、批判を受けた「防衛増税」について「5年間かけて強化する防衛力は、将来に向かって維持・強化していかねばならない」「そのための裏付けとなる安定財源は、将来世代に先送りすることなく、今を生きるわれわれが将来世代への責任として対応すべきもの」と記者団を見回しながらよどみない口調で語ってみせた。

防衛費総額を5年間で43兆円に増額すれば、現行計画(2023年度までの5年間)の総額約27兆円の約1.6倍。これについて岸田首相は、「戦後の安全保障政策を大きく転換して、国家・国民を守り抜く首相としての使命を断固として果たす」と胸を張った。

そのうえで、防衛力抜本強化については「端的に申し上げれば、戦闘機やミサイルを購入することだ」とする一方、「非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは、今後とも不変だ」と力説。さらに、国民的批判がある決定プロセスについては「問題があったとは思っていない」との認識を繰り返した。その表情には「自らの決断で難問を乗り切った満足感」(側近)がにじんでいた。

次ページ“安部シンパ”の立場は実はバラバラだった
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT