ヤマダ電機、住宅事業の高い目標に湧く疑問 「5年で売り上げ3倍」計画が無茶に見えるワケ

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ヤマダS×Lの社長には、長野純一氏が就任(5月26日の株主総会後)する。長野氏は、タマホームの営業本部長などを経験し、今年1月にヤマダ電機入りした人物だ。タマホームといえば、ローコスト住宅を得意としてきたハウスメーカー。ただ、そのタマホームは消費増税の影響により、今年度(2015年5月期)は営業利益が前期からほぼ半減した。

一方、ヤマダS×Lは元々、「kobori建築工房」など高額な住宅が得意なハウスメーカー。この世界は設計やデザインといった提案力が強く問われる。価格訴求で住宅を売ってきた長野氏が、ヤマダS×Lを再建し、引っ張っていけるかの手腕が試される。

施工体制や人材育成に課題も

仮にヤマダ電機グループの思惑通り、住宅事業が拡大するとしても課題がある。それに見合う施工体制が整うのか、また設計や営業といった人材をしっかり育成していけるかだ。住宅は家電製品と違い出来合いのモノではない。完成するまでに人が関わる部分が多い業種であり、さらにアフターサービスなどの質が問われる分野でもある。拙速な成長を目指せば、この部分で落とし穴にはまるかもしれない。

ヤマダ電機グループの「家電をより多く売りたい」という気持ちは分からなくない。ただ、市場環境やビジネスの構造を考えると、いくつもの高い壁を越えられなければ、ヤマダ電機グループがもくろむ住宅事業の急拡大はとても果たせない。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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