ヤマダ電機、住宅事業の高い目標に湧く疑問 「5年で売り上げ3倍」計画が無茶に見えるワケ

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その中で、3月27日に示されたのが2019年度までの5カ年計画である。ヤマダの住宅事業には、ヤマダS×Lのほかに、ヤマダ・ウッドハウス、ハウステックがあり、それぞれがヤマダ電機との連携を強めることで、事業を拡大するというシナリオだ。

郊外型家電量販店で住宅を訴求へ

具体的には、集客力があるヤマダ電機の郊外型家電量販店「テックランド」の中にモデルルーム、駐車場にはモデルハウスを建設。これまでハウスメーカーなどが実施してきた住宅総合展示場へのモデルハウスと比べ、約10倍の集客が見込まれるという。「ヤマダ電機が定期的に打つチラシは1回につき約3000万部であり、その訴求効果は大きい。店舗出店にもほとんどコストがかからない」。増田文彦ヤマダ・ウッドハウス社長は強調する。

グループシナジーを最大限に生かした戦略であり、「かつてないビジネスモデル」というのが、ヤマダ電機グループが住宅事業について強気な構えを見せる要因なのだ。

とはいえ、事業を取り巻く環境は大変厳しい。少子高齢化や経済環境の変化により、新設住宅着工件数は減少傾向にある。この中で住宅事業の売上高を3倍に引き上げるのは素人目に見ても至難の業だということが分かる。

そもそも住宅の購入を検討している人は、その目的を持って住宅総合展示場を訪れる。複数の住宅会社を比較検討もできる。ヤマダのテックランドのほうが圧倒的に来店数は多いとしても、そもそもは家電を買いに来ることが主目的の客に対して、住宅を購入させるところまで誘導するのはなかなかハードルが高い。住宅の売り上げ効果への影響は、今のところ未知数だ。

2013年12月に設立した「ヤマダ・ウッドハウス」という住宅子会社の事業拡大計画にも疑問符が付く。1坪(3.3平方メートル)あたり「28.8万円~」というローコスト住宅を供給し、今後、毎年30店舗を増やすとしている。今後5年で売上高1140億円を目指すというが、ヤマダ・ウッドハウスの2014年度売上高は約5億円に過ぎない。つまり5年で200倍超。もちろん意欲的ではあるものの、市場環境を鑑みると自力で果たせるかどうか。正直言って無茶な目標に見える。

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