アメリカ商務省が規制強化を発表してからすでに3カ月が過ぎている中で、1月11日現在、日蘭が具体的な施策を発表していないことは、日米蘭の調整が簡単でないことを示すとともに、事前調整を十分に行う前にアメリカが今回の措置を実施したことがわかる。
特に産業界の視点から見ると、どの輸出品目を規制するかが各社の業績に直結し、業界勢力図を変えることにもなりかねない。今回の措置に留まらず、同志国間でのルール作りやすりあわせが今後の課題として残る。
アメリカのサプライチェーン強靭化策
アメリカは昨年8月にCHIPS法、インフレ抑制法の2つの法律を成立させた。
まず、CHIPS法は中国との競争を念頭にアメリカの競争力を強化するために総額2800億ドル(約37兆円)を先端技術の研究開発に投資するものでこの中に半導体生産支援として527億ドル(約7兆円)の施策が含まれている。
CHIPS法を念頭に、アメリカのインテル、マイクロン、韓国・サムスンなどの企業は相次いでアメリカで新たに先端半導体工場の設立を表明しているほか、台湾TSMCはすでにアリゾナ州でアップル向けなどに先端半導体工場を建設中で、各社ともアメリカ政府の補助金に期待を寄せている。一方で、補助金受給企業は今後10年間、中国を含む「懸念国」での工場建設を禁じられる条項も盛り込まれている。
もう1つはインフレ抑制法で、歳出合計4990億ドル(約66兆円)の内、気候変動対策・エネルギー安全保障に3910億ドル(約52兆円)を充てる法律である。この法律には、電気自動車(EV)の購入者に、最大7500ドル(約100万円)の税控除を適用する条項が含まれるが、電池部材の北米原産率や重要鉱物がアメリカと自由貿易協定(FTA)を結ぶ国で生産される比率などで、厳しい条件が課されるほか、中国を含む「懸念される外国の事業体」が関与する部品や重要鉱物が含まれないことなどの条件も課されている。
上記2つの法律は、台頭する中国を念頭にカーター政権以来の本格的な産業政策を復活させることで、先端技術を通じてアメリカの経済競争力を向上させようとする意図と、先端技術の流出を防ぐ意図を持った法律である。
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