サプライチェーン強靭化策に関しても、どの先端技術を安全保障上の脅威と見なして管理していくかを協議できる枠組みを設けて、同志国の業界団体(例えば、アメリカでは商工会議所や半導体産業協会、日本では経団連等)にも一部オブザーバー参加してもらうなど、官民で連携して同志国間で受け入れ可能な施策を考える枠組みが必要ではないだろうか。
ここで重要なのは、戦後長い間、各国に支持されてきた現行の国際的枠組みを否定するのではなく、現行の枠組みでは対処できない課題に対してこれを補完するための枠組みを設けることである。また規制は狭くても厳しく行うといった「Smaller Yard Higher Fence」の考え方を取り入れることも必要であろう。
アメリカの経済安全保障政策における日本企業の役割
アメリカでは昨年11月の中間選挙で共和党が下院多数党を確保し、対中強硬派のマッカーシー議員が共和党内の保守強硬派の支援を受けて新たに下院議長となった。アメリカの対中経済安全保障政策は今後も強化されるとの声はワシントンDCでは多い。こうした中、2023年は、日本としては好むと好まざるとにかかわらずアメリカの経済安全保障政策を意識することがますます増えていくだろう。
一方で先端技術の規制において経済と安全保障をどのように両立させるか、或いは同志国間での経済的利益をどのように調整するか、といった課題で、日本はルールメイキングに貢献できる良い位置にいるとも言える。その理由として、日本は他国に先駆けて経済安全保障推進法を制定したことや、官民の対話がなされ、経済と安全保障を両立させるためのコンセンサスの経験があることがあげられる。
特に先端技術を抱える日本企業としても単にルールが決まるのを待つのではなく、自社にとって不利なルールが知らぬ間に決められないよう、業界団体などを通じて積極的に建設的な提言を述べていく必要もあるだろう。ルールメイキングに参加することは、日本企業にとってもますます重要となるような新たな時代に入っているためである。
(山田哲司/地経学研究所・経済安全保障グループ主任客員研究員)
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