メールを「結論から書く」残念な人に欠けた視点 なぜ要件よりも「余談」がよっぽど大事なのか

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心理学の世界に「ザイオンス効果」という現象があります。同じ人やモノに接する回数が増えれば増えるほど、その人やモノに対して好印象を持つようになる心理現象のことです。つまり、同じ人と1時間話すのであれば、1回で1時間話すよりも、10分ずつ6回会話したほうが親しくなるということです。メールを複数回交わすことで、この現象を活かすのです。

さらに理由はあります。それは、「小さなストーリー」を伝える機会を増やせること。「小さなストーリー」そのものはメールの本題ではありませんから、長々と書くべきものではありません。1通のメールで、せいぜい2、3行程度です。ただ、メールを何回もやりとりすることができれば当然、伝えられる内容も多くなります。その分、自分のことを理解してもらいやすくなるということです。

メールでは相手の使う言葉に合わせる

メールの文章というのは、会社によってかなり異なります。私はかつてはテレビ東京の記者として、現在はPR戦略コンサルタントとして、多種多様な会社からメールを受け取ってきました。もちろん社員としても、社風の異なる会社を経験してきました。さまざまな会社でメールをやりとりすると、メールの文章には社風がはっきりと現れるということを実感します。

例えば、ある日本の伝統的な巨大企業では社内外問わず、相手の名前には必ず肩書きをつけます。「山田様」や「山田さん」ではなく、「山田部長殿」なのです。平社員には丁寧に「田中社員」と「社員」をつけます。メールを見れば、関係者全員の役職が嫌でもわかってしまいます。

対照的にベンチャー企業やITなど比較的歴史の浅い業界では、肩書きを用いることはまずありません。役職問わず、全員「さんづけ」。

私がソフトバンクに転職して驚いたことのひとつが、孫社長の呼び方でした。社員がみな「孫社長」ではなく、「孫さん」と呼んでいるのです。孫社長列席の会議に日常的に出席している役員でも、実際に孫社長を間近で見たことがない現場の若い社員でも変わりません。もちろん孫社長本人がいる前でも同じ。そのような社風ですから当然、メールでも「孫さん」と書くことになります。

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私はメールを送るときは、相手の会社の文化に合わせるようにしています。

「山田部長殿」と書くような会社とやりとりする際には役職名をつけますし、「さん」づけの会社であれば、「山田さん」と書きます。

呼称だけではなく、文章の「硬さ」も相手に合わせます。「山田部長殿」で始まるメールであれば、文章のトーンも自然と全体的に硬くなります。逆に「さんづけ」の会社であれば、会話に近い文章の書き方になります。相手を巻き込むためには「同じ文化を共有できる人」と思われたほうがいいからです。

相手との距離を縮めたいときに、私がメールでの呼称で工夫している点があります。それは敬称を漢字の「様」ではなく、「さま」とひらがなで書くということです。「山田様」ではなく、あえて「山田さま」と書くようにしています。やわらかい、くだけた印象となるからです。ただし、年代や役職が比較的近い相手に限られます。あまりに目上すぎる相手に対しては、「失礼なやつ」と思われかねないので注意が必要です。

下矢 一良 PR戦略コンサルタント

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しもや いちろう / Ichirou Shimoya

早稲田大学理工学部卒業。テレビ東京に入社し、『ワールドビジネスサテライト』『ガイアの夜明け』を経済部キャップとして制作。スティーブ・ジョブズ氏、ビル・ゲイツ氏、孫正義氏、三木谷浩史氏、髙田明氏、藤田晋氏、前澤友作氏らにインタビュー。その後、ソフトバンクに転職し、孫正義社長直轄の動画配信事業(Yahoo!動画、現・GYAO)を担当。「ソフトバンク・アワード」を受賞。現在はPR戦略コンサルタントとして中小企業のブランディングや宣伝のサポート等を行う。

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