日本で承認は20件だけ「AI医療機器」普及させる策 超高齢化社会に向け、さまざまなサービスも

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ここまで、複数の事例を挙げましたが、日本の医療現場において、AI医療機器はどのくらい実用化されているのでしょうか。

正直なところ、まだまだ少ないのが実情です。2022年3月末の時点で、製造販売が承認されているAI医療機器は20件にとどまっています。なぜ、実用化が進まないのでしょうか。

大きく分けて2点の課題があると考えています

1つは、AI医療機器を世の中に出すには、「製造販売承認審査」を通過する必要があります。AIを開発できたとしても、直ちに医療現場で使えるわけではありません。審査に1年以上かかるケースもあり、承認後もバージョンアップごとに審査が必要なため、スタートアップを含めて、誰でも簡単に参加できるような市場ではありません。

また「製造販売承認審査」は、AI医療機器によって使われ方や効果効能が異なることもあり、共通の基準で審査しているわけではありません。開発の指針を明確にしづらい事情があります。

とはいえ、AI医療機器の発展のためには、より柔軟で合理的な審査プロセスの確立、迅速化が不可欠だと思います。

保険適用が進んでいない

もう1つは、AI医療機器への保険適用が進んでいない、という点です。日本の医療機関の半数以上は赤字経営だと言われています。厳しい経営状況のなか、AI医療機器を新たに導入してもらうためには保険という形で国による後押しが必要だと考えます。

以上の問題を解決するため、さまざまな取り組みも走り出しています。2019年5月には「AIを活用した医療機器の開発と発展を目指す協議会(略称:AI医療機器協議会)」が立ち上がりました。現在16の企業が参加し、政府や行政に対して、AI医療機器を社会実装するうえで実際に直面している現場の課題を提言しています。また、政府も「DASH for SaMD」と呼ばれるプログラム医療機器の実用化を促進する戦略を打ち出すなど、後押しをしています。

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