日本で承認は20件だけ「AI医療機器」普及させる策 超高齢化社会に向け、さまざまなサービスも

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AI医療機器を普及させるための策とは?(写真: Graphs / PIXTA)

「人工知能 (AI)が人間の病気を診断するなんてありえない」

私がAIの研究を始めたばかりの2017年ごろ、よく医師仲間から言われた言葉です。

「AIを活用した医療機器」と聞くと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?「人工知能」という言葉からロボットのようなものをイメージする人もまだまだ、多いかもしれません。

AI医療機器が実際、現場でどう使用されているのかと言うと、医師の診断・診療サポート面での活用がメインになります。医師も人間です。人間である以上、知識、経験はもとより、体力や精神面などでどうしても診断、診療に限界があります。だからと言って、発見が難しい疾患を見逃したくない、判断が困難な診断や治療法を誰かに相談したい……。そのような医師たちの願いを補助する存在が、AI医療機器なのです。

実際にヘルスケアにおけるAIの活用は世界中で注目を集めており、市場は2020年時点で約1兆円、2030年までに約26兆円産業になるという民間の試算もあるなど、急成長を続けています 。

肺がんの可能性を見つける

日本で開発が進むAI医療機器には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。エルピクセル社が開発したAIソフトウェア『医用画像解析ソフトウェアEIRL Chest Nodule』は胸部X線画像から肺結節候補領域を検出し、該当部分に赤いマークを表示します。

肺がん
『EIRL Chest Nodule』胸部X線画像

医師による読影と、ソフトウェアを用いた場合を比較すると、放射線科専門医で9.95%、非専門医で13.1%の感度が上がることが認められています。

また同社ではAIソフトウェア『医用画像解析ソフトウェアEIRL Aneurysm』も開発しています。MRA画像から、動脈の瘤状の変形に類似した候補点を検出し、マークをつけることで、より精度が高い診断へとつなげます。

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