眼科医が警鐘、スマホ依存者「眼球変形」のリスク 多くの小学生が眼軸長伸びる「軸性近視」を発症
「お子さんの眼は、スマホの使いすぎが原因で、急性内斜視を起こした可能性が高いですね。メガネで矯正が可能か、先ほど試してみましたが、矯正はできない様子です。詳しくはこの病気の専門の先生に聞いてみる必要がありますが、手術が必要かもしれません」
私がそう言うと、男子高校生とお母さんの様子がたちまち変わりました。
単なる近視だろうと思って受診したのに、まさか手術が必要になるとは思ってもみなかったのでしょう。この段階になって、ようやく2人は、「先生、どうすればいいですか⁉」とあせり始めました。
急性内斜視は「急性」というだけあって、一時的に斜視になった状態なので、しばらく近距離でモノを見ないようにして生活すると、症状が軽減することも多いです。しかし近年は、スマホによる「近業」を長期間続けた結果、内側に寄った眼の状態が固定化してしまい、改善されずに手術となるケースが増えています。
近業とは、眼と対象物との距離が近い状態で行う作業のこと。距離でいうと、30センチ未満で行う作業のことを指します。彼の場合、しばらくスマホをやめても症状は良くならなかったようで、後日、某県の大学病院で手術となりました。
ただ、残念なことに、手術をした後も、見え方は完全に元通りにはならなかったそうです。彼には、常にものがダブって見える「複視」の症状が残ってしまいました。
目の病気は人生の質を著しく下げる
このように「複視」などの症状が残ってしまうと、社会生活を送るうえでさまざまな不都合が生じます。例えば、文字情報を得ることが困難になって新聞や本などが読みづらくなる、街中の交通標識や飲食店の大きな看板さえも判読できない状態となる、といったことも。また、車の運転免許が取得できない可能性もあり、現代社会において、人の社会活動が大きく制限されます。
この複視のほか、緑内障、眼球運動障害、眼瞼けいれんや重症のドライアイなど、目の疾病などによって一時的あるいは部分的に見えないことで、社会的に「見えない人」として扱われる状態を、私は「機能的失明」と呼んでいます。
また、矯正視力(メガネやコンタクトレンズを使用したときの視力)が「0.1」を下回り、社会生活を送る上でさまざまな不都合が生じる状態は、「社会的失明」と分類されています。
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