家族がいた2人、出会って32年で「同性婚」するまで 家族やお金、将来の問題をどう解決してきたか

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法律婚はいつかそのうちゆっくりすればいい――と考えていたその矢先に、昨年6月末、アメリカ最高裁判所が「妊娠中絶の権利は違憲だ」という判断を下した。「この判決を聞いた瞬間、最高裁の次のターゲットは同性婚の権利だ、と確信した。保守派の判事たちが覆したい狙いはそこだ」とウィルコックスさんは言う。

素足でゴム草履を履いたまま結婚

同性婚の権利が覆されてしまってからでは遅い、滑り込みで法律婚をしなければ――と7月に慌てて地元の市役所に申請。病気の孫の世話をしていた平日に、市役所から連絡が来て、結婚の契約にサインすることになった。「結婚指輪は用意していなかったし、礼服もないけど、とりあえず家にあった指輪を2つ持って行った」とウィルコックスさん。

子供たち計4人と、孫たちが2人の結婚セレモニーに出席(写真:エレン・ビー)

白いシャツと青いズボンで2人の服装だけは一応慌てて揃えたが、真夏日の金曜日、ウィルコックスさんは裸足でゴム草履を履いたまま、役所に急いだ。「交際期間32年の末、こんなにバタバタと結婚することになるとは」と笑いながら。

結婚証明書に証人としてサインしたのはウィルコックスさんの長男とネイシさんの長女だ。4人の子供たちと6人の孫たちに見守られて、女性の裁判官の前で、2人は宣誓し、正式に結婚。ついに家族となった。2人が作った「遺書」の取り決めは、法律婚後も引き続き有効だという。

2人が最初に出会った1990年には、LGBTという言葉もまだ普及しておらず、外でおおっぴらに手をつなぐこともできなかったが、昨年から彼女たちが住む街でもセクシャル・マイノリティ(性的少数者)の「プライドパレード」が開催されるようになるほど時代は変わった。

32年の時を経て法律で認められた家族となった2人だが、そこへ至るまでに2人はそれぞれの子供のため、そしてお互いのために問題が起こる前に対策をしてきたことがわかる。これは同性婚をしている人のみならず、生涯をともにすると決めたパートナーがいるすべての人の参考になるのではないだろうか。

長野 美穂 ジャーナリスト

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ながの みほ / Miho Nagano

米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙記者として5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社に勤務した経験もある。

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