姉の離婚でショックを受けたのは亜紀さんだけではない。両親も「次は失敗できない」という気持ちが強くなり、亜紀さんの新しい恋人である同僚には厳しい目を向けるようになった。亜紀さんが1年で辞めた会社で彼は働き続け、不規則な長時間労働が当たり前だった。
その恋人とは数年間同棲をしていたが、そんな働き方で結婚生活を営めるのかと亜紀さんの親が不安視。亜紀さん自身も転職先の専門商社で活躍する男性たちと恋人を比較し、「この人じゃない、もっと自分を高められる相手がいるはず」と思うようになった。
当時、28歳。転職先では取り扱う食品の品質管理を任せられるようになり、結婚よりも仕事に気持ちが傾いていたのだ。
その後、亜紀さんは東アジアと東南アジアを飛び回るような日々に突入する。仕事ばかりしていると、親は「娘はこのまま一人なのか」と不安に駆られるのかもしれない。「私は先に死んでしまうのだから、誰でもいいからパートナーを作りなさい」と亜紀さんにアドバイス。亜紀さんは東南アジアの某国で作った恋人を親に紹介した。
「外国人はダメだったみたいです。母親はドン引きしていました」
娘に幸せになってほしい、と言いながらも、自分の「常識」に沿ってほしいしできるだけ近くにいてほしい。母親の本音なのだろう。
「私が結婚したいのはこの人だ!」と直感
亜紀さんがフリーライターの健二さん(仮名、52歳)と出会ったのは2019年末。共通の知り合いが開いてくれた飲み会で3次会まで一緒にいて、亜紀さんは「私が結婚したいのはこの人だ!」と直感したという。
「1次会の最初は座っていて何もしゃべらなかったので特に印象に残りませんでした。でも、立ち上がったら私より30センチ以上高い! カッコいいと思いました。そして、寡黙だけどリアクションがいいんです」
高身長で会話の「返し」がいい――。これだけで結婚相手を決められるのであれば世話はない。健二さんとの出会いが運命だったというよりも、亜紀さんが仕事の成功や挫折で鍛えられて本当の意味での自信をつけたタイミングが2019年末だったのだと筆者は思う。そして、実家にいる母親にも堂々と向き合えた。
「40歳の女と49歳の男が結婚してもプラスにはならないかもしれない。でも、マイナスにもならないでしょう。私は経済的に自立しているから、大丈夫!」
この内容で説得できたのかはわからない。母親も年をとり、「娘が幸せならばそれでいい」と本当に思えるようになったのかもしれない。仕事柄もあって傾聴の習慣がある健二さんも好印象を与えることができた。
「母親はすっかり喜んでしまって、『こんなデブで酒飲みの娘で本当にいいんですか?』なんて言っちゃっていました。健二さんは『がんばります』と答えていましたけど」
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