仙台市内はタクシーが増えたことで、乗り場でのマナー悪化や乗客の奪い合いで事故も多発した。こういった負の要素はたびたび国会でも議題に上がり、協会や行政でも適正化のため厳重に対応してきたという。仙台市総支部の尾形末男さんが、規制緩和がもたらした影響を説明する。
「タクシー同士の競争が激化したこともあり、さまざまな問題が表面化していきました。中心部で慢性的な交通渋滞を引き起こし、交通事故も増えた。さらに国分町などの繁華街では、タクシーの停車場所には20~30台がなだれ込む状況で、市民の方にも迷惑がかかっていました。
そこで市や運輸局、タクシー協会などが協力して『仙台市中心部タクシー交通問題対策協議会』が2008年に立ち上がったんです。以降、適正化、活性化に向けて減車計画が進んでいった。当時のような問題はずいぶん減っているのが現状です」
それでも、市場規模が半分以下に縮小し、日車営業収入に至っては1万5000円近く落ちたように、やはり規制緩和の被害は大きかった、と話す事業者も多い。仙台の事業者は大手社の進出や地元に根を張る社など玉石混交だが、緩和前の41社から、2006年に63社まで増えた事業者も淘汰が進み、現在は46社に落ち着いている。
新規参入した会社との溝は深い
市内のある老舗タクシー会社のドライバーは、「規制緩和以降増えた会社と、以前からある会社では溝が深い」とも明かす。先述のように仙台市内はタクシーが増えた影響で、さまざまな問題が起きた過去がある。
既存のドライバーたちからすれば、新規参入社により収益は落ち、さらに仕事上でもマナー違反が目立つのだから、その言い分は一定の正当性を持つのだろう。
筆者が気になったのは、「なぜ全国的にみても仙台がここまで事業者が増えたのか」という点だった。確かに東北地方最大の都市で、100万人が居住する仙台はタクシー文化がもともと根付く土壌ではあった。とはいえ、タクシー業は決して収益性が高い業種ではない。それゆえに、増加幅は異常ともいえるもので、その影響が今なお影を落としているからだ。
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