32歳がんで逝った母親が双子娘に遺した生き様 告げられた病名はステージ4の「スキルス胃がん」

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こうめいさんは、ただぼおっと説明を聞いていた。スキルス胃がんでステージ4? どういうこと? 説明の中身を、受け止めることができなかった。

えつこさんは、両手で顔面を押さえ、あふれる涙をなんとか止めようとしていた。本人に先立って家族に対して検査結果を説明したのは、本人以上に家族が取り乱してしまう事態を避けるためだったと、病院側からあとで聞かされた。

たかこさんは、泣き崩れるえつこさんに「大丈夫!」と声をかけ、背中をさすりながら、説明書類の文面を携帯電話のカメラで撮影していた。次の手を考えるためだった。

「あと、どのくらいなんでしょうか」

いま推定される生存期間について、こうめいさんが質問した。医師の答えは、「おそらく、1年もないかもしれません」だった。想定外だった。

あと1年で、みどりちゃんがいなくなる?

あと1年で、娘たちが母親を失う?

がんについての基礎知識がほとんどなかったこうめいさんとしては、あまり深くは考えておらず、何となく「がんだとしたら、10年はもたないかもしれない。それでも、5年くらいはきっと大丈夫だろう」というくらいの認識での質問だった。「1年」という回答は、あまりに短かった。

突然のがん告知の衝撃

現実とのギャップが大きすぎて、こうめいさんは、これから先の闘病をどうしていくべきか、思いを巡らすことができなかった。みどりさんのいない家族の暮らしが想像できず、娘たちが母の死を受け入れられるのかもわからなかった。何げなく質問したことを、後悔するような気持ちだった。

午後3時、今度はみどりさんも加わった。医師はさっきと同じ説明をした。残された時間については、だれも聞かなかった。

みどりさんは何も言わず、左手で目頭を押さえながら、説明を聞いていた。右隣にいたこうめいさんが、ひざをつかむみどりさんの右手を握ると、ぐっと握り返してきた。涙をこらえて、必死に事態を受け止めようとしていた。

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