電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手の台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)が、インドへの投資拡大に動き出した。同社は12月8日、シンガポールの子会社フォックスコン・シンガポールを通じて、インド法人のフォックスコン・ホンハイ・テクノロジー・インディア・メガ・デベロップメントに5億ドル(約681億円)の増資を行うと発表した。
ホンハイは2019年1月、同じくフォックスコン・シンガポールを通じてインド法人に2億1400万ドル(約292億円)を出資し、2021年12月には3億5000万ドル(約477億円)を追加出資した。上述の増資が完了すると、累計投資額は10億6400万ドル(約1450億円)に達する計算だ。
注目されるのは、今回の発表が中国の主力生産拠点で起きたトラブルに衆目が集まったタイミングに重なったことだ。ホンハイのEMS事業の主力子会社、富士康科技集団(フォックスコン)が河南省鄭州市で運営する工場では、10月以降の新型コロナウイルスの感染拡大により、隔離措置で出勤できなくなったり、感染を恐れて離職したりする従業員が続出。工場の稼働率が大きく低下した。
(訳注:鄭州工場のトラブルに関しては『中国「iPhone生産拠点」でコロナ・パニック発生』を参照)
iPhone 14 Proの出荷台数が減少
鄭州工場は、アップルのスマートフォン「iPhone 14 Proシリーズ」の受託生産を手がけている。市場調査会社のイザイア・リサーチの分析によれば、鄭州工場の11月末時点の稼働率は80~90%まで回復したが、フォックスコンの目標だった90~100%には届いていない。その結果、2022年10~12月期のiPhone 14 Proシリーズの出荷台数は当初計画より300~500万台減少するという。
財新記者の取材に応じたホンハイ関係者によれば、中国での新型コロナの感染拡大(と中国政府のゼロコロナ政策)は、アップルに深刻な危機感を抱かせた。アップルが(中国に集中しすぎた)生産拠点を分散させる決意を固めたのを受け、ホンハイは海外戦略の見直しを加速しているという。
インドにおけるホンハイの主力生産拠点は、インド南東部のチェンナイにある。財新記者の取材によれば、工場では8~9本の生産ラインが稼働しており、従業員数は1万~2万人。現時点では生産した製品の大部分をインド国内に出荷し、輸出は全体の5分の1にとどまっている。
(財新記者:劉沛林、覃敏)
※原文の配信は12月10日
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