香港の著名実業家の李嘉誠氏が築いた港湾運営事業の権益が、近く売りに出されるかもしれない。シンガポールのPSAインターナショナルが、長期保有してきた長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)傘下の港湾運営会社の株式売却を検討していると、シンガポールの国策投資会社テマセク・ホールディングスの関係者が財新記者の取材に対して明かした。
PSAインターナショナルはテマセク傘下の世界的な港湾運営大手だ。1997年にシンガポール港務局の民営化により発足。2006年にCKハチソン(当時はハチソン・ワンポア)の子会社ハチソン・ポート・ホールディングス(HPH)の経営権の20%を44億ドル(約6034億円)で取得した。
上述の関係者によれば、世界各地での地政学的な緊張の高まりや戦争の勃発、(グローバル景気の後退による)貿易需要の縮小などが重なるなか、PSAインターナショナルは投資ポートフォリオの見直しに着手。現時点では、保有株の売却額などに関する検討の初期段階にあるという。
「港湾関連資産の弱含みを象徴」
HPH は、世界26カ国の52の港湾で290を超える埠頭を運営している。2021年のコンテナ取扱高は4700万TEU(20フィートコンテナ換算)に上り、世界の港湾運営会社ランキングで第6位だった。
同社の最大の事業資産は(香港の2大コンテナターミナル運営会社の1つである)香港国際ターミナル(HIT)だ。HPHは中国本土でも上海港、深圳港、寧波舟山港などの大規模港湾の権益を保有している。
PSAインターナショナルがHPHに投資してから、すでに16年が経つ。前出の関係者によれば、テマセクは長期投資家として、投資先の本源的な企業価値を重視する。ここに来て権益売却の検討を始めたのは、将来的に資産価値が上昇する可能性が低いと判断したためとみられる。
「港湾関連資産のファンダメンタルズの弱さを象徴するものだ」。ある市場関係者は、テマセクの動きをそう分析する。新型コロナウイルスの世界的大流行の影響で、各地の港湾施設は2022年前半まで荷さばき能力の逼迫が続いていた。
しかし年後半に入ると、グローバル景気の減速とともに国際貿易の縮小が始まった。今後数年間、世界の港湾は互いに貨物を奪い合う状況となり、港湾運営会社の業績はおしなべて悪化すると予想されている。
(財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は12月14日
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