「食べ方」を意識しない人が失い続けてしまうこと 心の健康を取り戻す、メンタルヘルスとの深い関係

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食べ物の選び方で血糖値に起こる変化は、気分や集中力に大きく影響する可能性がある。

炭水化物を摂ると、体はそれを消化してグルコース(糖)に変換し、血液中に送る。するとそのグルコースをエネルギーに変換するため、膵臓でインスリンが生成される。

血糖値は摂取する炭水化物の種類で決まる。「間違った」種類(精製された炭水化物や糖類)を摂取すると、ジェットコースターに乗っているように、エネルギーが急増したかと思うと急降下してエネルギー不足を感じ、集中力がなくなり、エネルギー密度の高い食べ物がもっと欲しくなる。糖類によるエネルギーを急激に増やすビスケットのようなものに手が伸びるのはこういうときだ。

しかし、野菜や果物、全粒粉に含まれるような、ゆっくりとグルコースが放出される正しい種類の炭水化物を摂取すれば、このジェットコースターに乗らずにすむ。幸福感が高まり、集中でき、エネルギーが長続きする。

ドカ食いにつながる感情のループ

誰でもときどきは気持ちを紛らわせるために食べる。ストレスや退屈、不安、睡眠不足があると、もっと食べたい(または食べたくない)気持ちになる。

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問題が生じるのは、感情が食べ方を左右するようになる場合だ。辛いことへの反応として食べすぎてしまうと、過食⇄制限サイクルに取り込まれる可能性がある。このサイクルでは、ドカ食いの後に罪の意識がやってくる。恥や困惑さえ感じることがあり、その埋め合わせとして食べ物を制限しようと考えるようになる。制限は食べ物への強迫観念につながるので、サイクルがまた最初からスタートする。

不健康な食べ物を制限するのは正しい行動に思えるかもしれないが、それがドカ食いのサイクルをスタートさせてしまうおそれもあると知っておこう。

過食⇄制限サイクルは、誰にでも起こりうる。ドカ食いのサイクルを断ち切るためには、次のような考え方がある。

1 自分の価値観を分析して、自尊心を高められるようにする。
2 食事内容と食事のときの気分を日記につける。
3 食事に関するルールや罪の意識の有無から、自分の感情を理解する。 
4 ドカ食いの引き金になっているものを見つける。不安、恐怖、退屈など。
5 自分で自分を否定するような内なる声と戦う。
6 食べ物は楽しく食べて当たり前なのだと、自分に優しくなる。
次ページ食べ過ぎで苦しむなら「過食性障害」かもしれない
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