クラゲを食べる水族館!調理法も教えるワケ 世界一!加茂水族館の"3つの非常識"

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遠藤 功(えんどう いさお) 早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長。早稲田大学商学部卒業後、三菱電機、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て現職。早稲田大学ビジネススクールでは、経営戦略論、オペレーション戦略論を担当し、現場力の実践的研究を行っている。 また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。

遠藤:村上館長の話を伺っていると、資金やノウハウはなくても、現場に「自由度」さえあれば、現場の知恵で苦境を乗り越えていけると、あらためて感じます。「自由度」はあるのに、「自分たちでは何もできない」と決めつけている人が多い気がします。

村上:昔の私も、周りのせいにしていましたから、偉そうには言えませんね。でも、何か企画する場合、みんなが「いい」と言うアイデアは、たいていダメですね。

遠藤:たとえば、どんなものですか?

村上:以前、巨額を投じてシロクマを主役にしようとした水族館がありました。いかにもコンサルタントとお役人が考えそうな企画だと思ったら、案の定ダメでしたね。

遠藤:どこがダメだったんですか?

村上:人が理解しやすいものは、すでに誰かがやっていて、目新しさがないのです。それだとお客さんの心の琴線に触れませんし、話題になりませんから。 

非常識2 水槽の魚を「調理法付き」で展示する

魚展示の終わりに、ヒラメやサクラマスなどの調理法が紹介されている

遠藤:もうひとつ、加茂水族館で驚くのは、水槽の魚を「調理法付き」で展示していることですね。

村上:基本的には、地元の庄内で獲れる「海の幸」をたくさん展示しています。アイナメやメバル、ヒラメやマダラとか。

遠藤:都内の居酒屋メニューで出てきそうな魚たちが、「調理法」が書かれた水槽で、とても優雅に泳いでいる。刺身のおろし方や、魚を使った汁物の作り方まで書かれている、そのギャップがユニークですね。

村上:そもそも、ヨソの水族館と同じことをしていても、意味がありませんからね。それに、代々伝わる郷土の食文化でもありますし。

 遠藤:確かに、「水族館とは珍しい魚を展示するところ」という先入観を揺さぶるには、居酒屋で見慣れた魚を泳がせるのが「最大の差別化」ですよね。コスト面でも、珍しい深海魚を連れてくる分を、クラゲに投入できますし。

非常識3 館長も「電話当番」をする

遠藤:もうひとつ驚いたのは、新館には館長室がないのですね。

村上:私が「いらねぇー」と言いました。私が離れてひとりになれば、職員みんなの気持ちがわからなくなりますから。ウチは職員の休憩室もないんですよ。

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