クラゲを食べる水族館!調理法も教えるワケ 世界一!加茂水族館の"3つの非常識"

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村上 龍男(むらかみ たつお)
1939年、東京都生まれ。山形大学農学部(応用動物学専攻)卒業。メーカー勤務を経て鶴岡市立加茂水族館勤務。1967年から館長として水族館の再生に力を注ぎ、2012年にはクラゲ展示種数世界一へ。2015年月3月末で館長を退任。

村上:2000年に、クラゲ12種類の展示を成功させて、日本一になりました。そこで垂れ幕まで作って宣伝したのに、お客さんが3カ月間連続で減り続けてしまったのです。その頃に、南米で底引き網漁の船長をしていた元漁師さんが、「クラゲに熱湯かけて酢醤油で食べたらうまかった」と教えてくれて、「これだ!」とひらめきました。

遠藤:おカネのかからない「話題づくり」で、知名度を上げようとしたんですね。

村上:まず「クラゲを食べる会」を企画し、マスコミに招待状を送りました。「お腹は壊させませんから、安心して食べに来てください」とわざわざ書き添えて。

遠藤:確かに、そう誘われると、妙に行きたくなりますね。

村上:当日は、「クラゲのしゃぶしゃぶ」に「クラゲの握り寿司」、ジュースに入れて「ナタデココ風クラゲココ」など、10種類ほど提供したら、食事会のニュースとともに、「クラゲ展示数日本一の加茂水族館」と報道されて、客足が増えだしたのです。

「クラゲラーメン」でレストラン売り上げ4倍増

遠藤:「クラゲを食べる会」の5年後に、「クラゲアイス」や「クラゲ入りまんじゅう」「クラゲ入り羊かん」などの関連商品の販売が始まったのですよね。

黒いキクラゲ(キノコ)の両側に海のクラゲが盛られたクラゲラーメン。女性客を意識したクラゲ柄のラーメン鉢もかわいい

村上:はい、業者に相談したら最初は笑われましたが、発売したら爆発的に売れました。その翌年、館内に「クラゲレストラン」を開業し、クラゲ定食とクラゲラーメンを始めたら、レストランの売り上げは4倍以上に急成長しました。

今思うと、展示数で日本一になって客足が減少した経験が、大きな転機でした。自分たちがどんなにすばらしいことをやっていても、それが人に知られなければ存在しないのと同じで、意味がない。普通にやっていてはダメなんだ、と痛感させられましたから。

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