M-1途中に謎のCM、「野田ゲー」の知られざる熱狂 野田クリスタル「正直、とてつもなく大変でした」

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――特に思い入れのあるゲームはどれですか。

野田:『THE 芸人』ですかね。これは、いろんな芸人にアンケートを書いてもらって作った芸人育成ゲームです。元々こんなゲームを作りたいと思ってプログラミングの勉強を始めたので、最初に作りたいゲームではあったんですが、僕に技術がなくて作れなくて。今のところプレイしている皆さんの反応も上々で、「みんなも好きなんだな」と。自分の好きなゲームと、プレイヤーが思い描く好きなゲームが同じだったことがうれしかったです。

お笑い芸人育成ゲーム『THE 芸人』。素材の一部を人気シミュレーションゲームメーカー「カイロソフト」が提供 ©吉本興業

――『THE 芸人』は「やめどきがわからない」というツイートも見かけます。

野田:僕は(素材の一部を提供してもらうことになった)カイロソフトさんのシミュレーションゲームを散々やってきて、「これは一生やっちゃうだろ?」という感覚があって。

こういう感覚ってどれだけの人が持っているんだろう、というワクワク感があったんですが、(同じようなテイストのシミュレーションゲームを)出してみたら「やっぱりみんなそうだよね?」って。

CM撮影ではクラファンで集まった素人集団が…

――『M-1グランプリ』でのCMはどのような経緯で制作が決まったのですか。

野田:M-1グランプリのCMについては、正直、前からすごいやりたいと思っていました。でも、夢の話というか、最終地点かなと思っていて。2021年はM-1王者として、2022年の今年も前回王者という立ち位置で絡む機会がありましたが、また新しいチャンピオンが生まれると、さすがにM-1とのつながりは薄くなる。それがなんとなくさびしいと思っていて。離れていくのであれば何か関わる方法がないかなと思って「じゃあスポンサーだな」と。「野田ゲーのCMがM-1で流れるようになったら最高だよな」と思っていたら、いきなり今年流れることになりました(笑)

――M-1で流れるCMですので、制作費も大変なことになりそうですが……。

野田:「どこから金が出てるの?」ということは、あえて深く聞かないようにしています。M-1グランプリという枠の中で、相当クオリティの高いCMを作っていただいたので、想像するだけで吐き気がする(笑)。「野田ゲーを何本売ればいいんだ」っていう金額がかかっていると思います。

これは野田ゲー全般に言えることですが、「採算は合わないけど、とにかく実現していこう」というのが前提にあります。CMの予算をゲームの売り上げが上回ることはないと思うので、「おもしろ」として楽しんでもらえれば。

――当初からクラウドファンディングをしようと考えていたんですか?

野田:正直、どちらにしようか悩みました。「予算もないし、クラウドファンディングでお金を集めたほうがいいんじゃないか」と思う一方で、何でもやるもんじゃないし。とはいえ、タダで参加できるとなると、モチベーションの違いが出てきてしまうという問題もあって。それで最終的に「やってみようか」ということになりました。今年10月くらいに話が来て、直前でCMのクラファンを始めたので、スケジュールはかなりカツカツでしたね。

――現在もツイッターでCMの動画が見られます。注目してほしいところは?

野田:単純に知っている芸人がちらほら映るので、そこに目がいきがちですが、よくよく考えてもらいたいのは、ほぼ全員素人だということ。こんなに素人が出ることってないと思うんですよ。しかも、俺とどれだけ差があるんだというくらい、みんな演技がうまくて。プロ魂がすごい。CMの監督も「いやいや、素人ですよ……」と思うぐらい注文を出すんですよね(笑)。(CMの演出で水をかけられて)ビシャビシャになるし。でも「もっとこんな感じで」って注文を受けるうちに、参加者もだんだんプロの目になってきて。それがすごい楽しくて。「いいなぁ、いい体験だなぁ」と。

――僕(筆者)も出資者の一人としてビシャビシャにしていただきましたが…(笑)。 とにかく皆さんものすごい熱量でした。

野田:こんなに熱量があるとは思わなくて。正直言うと、CM撮影にあたって野田ゲーの制作側は覚悟していたんです。「1人ぐらいはふざける奴、CMを荒らしてくる奴がいるんじゃないか」とか。「めっちゃ演技にならない人もいるだろうな」とか。そういうのがあっても、「まあ、しょうがないだろう」と始めたものだったんですよ。

でも、何の文句も言わず、全員がプロみたいに動いてくれて感動しました。すごかった。CM撮影現場での「マネージャー手伝い権」に出資してくれた方々も、本当にずっとマネージャー仕事をしてくれていて「まじか、これは」と思いました。

(この記事の後編:野田クリスタル「野田ゲー新作5本を語り尽くす」
平井 基一 フリーライター

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ひらい もとかず / Motokazu Hirai

1978年生まれ。愛知県一宮市在住。三重大学人文学部卒。某有名ブラック企業でハチャメチャな営業マン時代を経験後、名古屋の出版社勤務を経て独立。2003年1月「オフィス・ヒライ」立ち上げ。ライターとして経済誌や地元情報誌などで執筆を行うほか、編集者としてグルメや旅行、子育て関連本などを企画・制作。ブログ『名古屋のフリーライター日記。』を不定期でゆる~く更新中。また、2010年秋からは一宮市木曽川町で大正時代から続く伝統農業「採種タマネギ」の担い手として新規就農。現在、ライターと農家との“二刀流”で奮闘中。

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