だから私たちがその計画に基づいてどんなGRをやったかというと、まず米国の上院、下院別に表を作りました。最初はホンダの事業所があるところ。ここの議員さんにホンダの事業や活動内容だけではなくて、経済的な貢献度を理解してもらう。
ジャパンバッシングを起さないための影の努力
園田:2つめ、米国には重要な委員会があります。上院の財政委員会や、下院の環境委員会や産業委員会、それから商業委員会。そういった委員会の議長、あるいは副議長のポストにある人たちです。
それとはまったく関係なく、米国では大きな政策を議論するとき、リーダー格的な役割を果たす議員がいる。これが3つめのグループ。このように仕分けして、彼らに渡すべき情報を精査しながら、ラフなカレンダーを作っていきました。いつ、どの議員さん、あるいはスタッフと会ったか。何を話したか、どういう情報を提供したか。反応はどうだったかも記録する。それを3年ぐらい続けました。
それが実を結んだのかどうかは証明できませんが、米国の金融・住宅バブルがはじけて、GMとクライスラーが倒産しても、ジャパン・バッシングのキャンペーンを張る議員はいませんでした。もちろん、ミシガンの議員は別です。彼らはGM、フォード、クライスラーなど、昔からあるデトロイトの3社を守らないといけない。でも彼らの発言に共感する議員はいなかった。だからジャパン・バッシングには至りませんでした。裏を返すと、それほど日系メーカーの現地生産が米国にとって大きな存在になったといえます。
ああいう危機のときは、やっぱりまず異端児を探すものです。しかしブッシュ大統領も、デトロイトの3社を守らなければいけないというポジションはまったく取らなかったし、2期目の遊説でオハイオに来たときに、「ホンダというのはすばらしい会社なんだ」と言ってくれた。それから、いろいろな共和党の議員さんも、私どものよき理解者になっていただきました。
そうこうするうち、2010年ぐらいからトヨタさんの安全問題が出てきます。あれはジャパン・バッシングのひとつなのか、われわれも機会を見つけて、共和党や民主党の議員に尋ねました。でもそれはなかった。だからあれは純粋な安全問題に関する米国の議会とトヨタとの対決だったと、私たちは解釈しています。
桑島:いずれにせよ、GM、フォード、クライスラーというビッグスリーが傾いたというのに、1980年代のような貿易摩擦にはならずに済んだ。それにはやはり、日頃からのロビイングがものを言ったのでしょうね。続きは後編で詳しくお聞きしたいと思います。
(構成:長山清子、撮影:梅谷秀司)
※この記事の後編は3月28日(土)に公開します
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