米国市場で生き延びる、ホンダ「影の努力」

ジャパンバッシングを未然に防ぐ

桑島いいレジデンスが限られているわけですね。

園田自動車会社の経営者や幹部が住むような郊外の町は白人ばかりで、黄色人種は小学、中学校でもせいぜい1人か2人。そんなところでしたね。

それで1995年の日米自動車交渉が終わり、1998年の8月に、「ワシントンでGR(ガバメント・リレーションズ)の仕事をするように」と言われ、2012年までずっとワシントンにいました。

桑島なるほど。

すべての自動車会社のイシューを変えた、9.11

園田GRの主な仕事は、ホンダについて、議会や行政府などワシントンのオーディエンスに理解してもらうことです。その相手には、シンクタンクも含まれます。このシンクタンクとはいかなるものか、日本ではどんなに説明してもなかなか理解してもらえませんが、米国のそれは政策を作り、世の中に提案する。それから外交官や政策担当者などプロフェッショナルを養成して政府に供給していくという、重要な仕事を担っています。そういう連中と付き合って、ホンダをよく理解してもらうのが仕事でした。

それからもうひとつの課題は、関税問題です。日本のビジネスをやっている人には、関税問題に対する知識があまりない。ブローカーに任せているけれど、ブローカーもあまりわかっていない。だからホンダのいろいろな事業所を回って、輸出の規制に合致しているかどうかを見て、プランを出したりしていました。

2001年になると、9.11のテロ攻撃がニューヨークで勃発します。あれで私たちのイシューがガラッと変わった。それまでは関税問題と言っていたのが、テロリストの攻撃に対してどうやって米国を守るかが最重要課題になったのです。以来、米国にはいろいろなテロ対策の法律ができて、それに対応するために、膨大な作業と費用が発生しました。

桑島それはホンダだけでなく、すべての自動車会社も同じですか?

園田GM(ゼネラルモーターズ)から何から全部です。2005年ごろの米国経済は最高潮でした。FRBのプライムレートが、3.5%から5%ぐらいまで上がった。ところが長期金利は上がらなかった。米国の長期金利と住宅の金利は連動しています。これが上がらなかったから、その後のサブプライムローン問題などにつながっていったわけです。

米国の経済は2007年までに猛烈な勢いで拡大しました。自動車のほうも年間1600万台の販売をキープしながら、安定的に成長しました。しかし中身はトヨタさんやホンダなど日本車です。現地生産でどんどんシェアを増やしていきました。そういう中で私はワシントン事務所で危機管理マニュアルを作りました。

GM、フォード、クライスラーなど「ビッグスリー」と呼ばれる米国の自動車会社の経営がもし赤字に転落したら、われわれはGRとして何をしなければいけないのか。繰り返しますが、2005年当時、米国経済はすばらしくよかった。でもその頃、私がアナリストや『ウォール・ストリート・ジャーナル』の支局長などと話していたのは、米国の自動車販売台数が年間1500万台を切るとき、デトロイトはおかしくなるだろうということです。それはその後、現実となって証明されました。

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