コロナ禍やウクライナ先頭が引き起こした世界的不安を解消できるのか。「2023年大予測」特集の政治・経済パートから抜粋。
欧州への供給を大幅削減
ロシアのウクライナ侵攻以降、地政学的な緊張が続く中、世界の天然ガス・LNG(液化天然ガス)価格は未曾有の水準に上昇している。欧州のスポットガス価格であるTTFは2022年8月26日、99ドル/MMBtu(100万英国熱量単位)と過去最高値を更新。アジアでも欧州市場につられてスポットLNG価格は空前の高水準で推移している。
23年もロシアの供給量削減で価格高騰が演出され、需給面では22年より厳しい状況が予想される。とくに欧州ではガス不足が一段と深刻化するおそれがある。これを解決するために欧州は、LNG受け入れ能力の拡張や代替調達交渉を急ぐが、ガス不足は容易には解消しないと考えられる。
ロシアにとって天然ガスは西側諸国の経済制裁に対抗するうえでの最大の武器となっている。ロシアは天然ガスの生産量では米国に次ぐ世界第2位だ。ウクライナ侵攻前年の21年、欧州諸国にとってロシアは域内需要の3割以上を依存する最大の供給源だった。代替しうるだけの供給源がないことが、ロシアの強みとなっている。
ウクライナ侵攻後、ロシアは最大の輸出先である欧州への天然ガス輸出を大幅に削減した。主要パイプラインであるノルドストリームを通じた供給停止も加わり、22年秋時点で欧州へのパイプラインガスの供給量は前年同期比約9割減に落ち込んだ。22年の1年間でも前年比7割減となる見通しだ。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待