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日本の安全保障は「一国平和主義」脱却が不可欠だ 目指すは地域秩序「極東1905年体制」の維持

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コロナ禍やウクライナ先頭が引き起こした世界的不安を解消できるのか。「2023年大予測」特集の政治・経済パートから抜粋。

12式地対艦誘導弾
反撃能力の1つとして12式地対艦誘導弾の改良が想定される(写真:mirai4192/PIXTA)

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ウクライナ、気候変動、インフレ……。混迷を極める世界はどこへ向かうのか。12月19日発売の『週刊東洋経済』12月24-31日号では「2023年大予測」を特集(アマゾンでの購入はこちら)。世界と日本の政治・経済から、産業・業界、スポーツ・エンタメまで108のテーマについて、今後の展開とベスト・ワーストシナリオを徹底解説する。この記事は本特集内にも収録しています。

ウクライナ侵攻で安全保障環境が激変

週刊東洋経済 2022年12/24-12/31【新春合併特大号】(2023年大予測 108のテーマで混沌の時代を完全解明!)
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戦後日本の安全保障政策は長らく、日米安全保障体制を維持しつつ、漸進的な防衛力整備を進める、というものだった。またそこでは、憲法第9条による厳しい制約が課されてきた。典型的なのは、「集団的自衛権行使違憲論」である。

しかし中国の軍事的台頭や、北朝鮮の核能力向上、さらにアメリカの対外関与の後退という長期的趨勢は、日米同盟強化や、その中で日本がより大きな責任を引き受けることの必要性を高めた。

個別的自衛権のみで日本の安全が守られる、とする考えは、過去のものとなった。この点についてなされた改革が、第2次安倍晋三政権の下での平和安全法制の成立(2015年)であった。これにより、「存立危機事態」における集団的自衛権の行使が、限定的に容認されることになる。

ただ、従来は日本自身に対する武力攻撃の発生時に許されていた自衛権の行使を、その前段階でも認めるようにしたにすぎない。これにより、今ある自衛隊の装備や予算が増えるわけではなかった。

ところが、2022年には日本の隣国たるロシアがウクライナに侵攻するなど、日本を取り巻く安全保障環境はさらに厳しさを増した。集団的自衛権行使の限定容認のような「安上がり」な改革だけでは、もはや日本の安全を守れなくなってきている。長射程ミサイルなど反撃能力の保有や防衛費増額など、コストを伴うけれども防衛力の中身そのものを強化するための施策が必要になっている。

ではその先に、日本は安全保障のうえで何を目指すべきなのかを、歴史を俯瞰して考えたい。一言でいうと、それは「極東1905年体制」といえる地域秩序の維持だ。

次ページ現在も生きている「極東1905年体制」
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