「両利きの経営」が一代だけでは終わらない理由 20年以上前から知の探索を唱えた出井伸之氏

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冨山:昔からそういう人ですよ。学者であれ、技術者であれ、経営者であれ、わりと荒唐無稽なことを言ったり、面白いことを言ってくる若い人が好きで好きで仕方ない。

多くのスタートアップを支援した出井伸之氏

冨山:出井さんの偉いところは、応援するだけでなく、リスクをとるところ。私たちがIGPIをつくるときにも、既存の金融秩序に革命を起こそうとしていることに注目していただき、準備段階でリスクマネー研究会をつくると、議長を引き受けて、出井さんの信用でいろいろな人と引き合わせてくれました。

出井さんがベンチャー支援に熱心だったのは一貫した考え方があります。DXが起きると、既存のものが根こそぎひっくり返されるので、探索でイノベーションを起こさないといけない。会社の中でやろうにも限界があるので、世の中全般でやっていく。

だから、スタートアップを応援しなくてはならない。そのときに欠けていたのが、リスクをとる起業人材と、スタートアップに投じる長期の資金です。IGPIはそれをある部分で解決しようとしていたので、応援してくれました。

入山:私が懇意にしているワープスペースは、筑波大学発のベンチャーで宇宙衛星上のインターネットの基地局をつくろうとしていますが、やはり出井さんがサポートしていました。手軽なインターネット・スタートアップではなく、技術開発に20年くらいかかるスタートアップをしっかりと支援されるのだなと思いました。

冨山:ディープテックはどうしても長期資金が必要です。だから、アメリカではそういう会社はIPOせずに、ファイナンスを繰り返し、プレIPOの状態でストックオプションも売買して人を入れ替えるのです。

しかし日本では、税制上それができない。その意味では、アメリカのほうがはるかに辛抱強くて、出井さんはそこに問題意識を持っていました。さらに、目利き能力もあって、製薬ベンチャーなども20年を超えて結果を出しています。

入山:だからこそ、出井さんは若い人たちに尊敬されていたのでしょうね。

(構成:渡部典子)

冨山 和彦 経営共創基盤(IGPI)グループ会長

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とやま かずひこ / Kazuhiko Toyama

経営共創基盤(IGPI)グループ会長。1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学MBA、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。共著に『2025年日本経済再生戦略』などがある。

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入山 章栄 早稲田大学ビジネススクール教授

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いりやま あきえ / Akie Iriyama

1972年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年にピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーを経て、2019年より現職。専門は経営戦略論、国際経営論。著書に『世界標準の経営理論』などがある。

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