薄皮シリーズ「5→4」変更の発表が"失敗"である訳 消費者とのコミュニケーションにエモさが欠けた
語り草となっているのが、江崎グリコの飲料製品「ドロリッチ」だ。ストローで飲むコーヒーゼリーで、イチゴなどのバリエーションもある人気商品だったが、売上減少を理由に、2019年春に生産終了となった。終了発表当時、その要因として、リニューアルのたびに価格を据え置きながらも、徐々に内容量を削減(最終的には増量)したことにあるのでは、と指摘する声が多々あった。
たしかに「増量」は、でかでかとアピールする割に、店頭で「減量」をうたう商品は見たことがない。値上げであれば、値札が変わるのでわかりやすいが、内容量が減っていても、なかなか気付かない。だからこそ、知った後の失望は、より大きくなる。
値上げで消費者の評価を上げたケースも
一方で、値上げでかえって名をあげた、珍しい例もある。赤城乳業の氷菓「ガリガリ君」は2016年春、60円から70円(いずれも税別)へ値上げした。
それまで「子供たちに対する未来への投資」を理由として、25年にわたって価格を維持していたが、食品需要の変化をはじめ、原材料や包装資材、そして人件費の高騰などを背景に、「自社企業努力でのコスト削減が可能な限界」を超えたとしている。
ここまでは、昨今の価格改定と似ているが、ひと味違ったのが「伝え方」だ。赤城乳業は価格改定日と、その翌日の2日間限定で、テレビCMを放映した。社長らのズームから始まり、徐々に画角が広くなっていくと、社屋前に従業員がズラリと並んでいる様子だとわかる。ミュージシャン・高田渡さんの楽曲「値上げ」をBGMに、「25年間 踏ん張りましたが、60→70」のテロップが出るとともに、一同がお辞儀する。
通常より長い60秒CMながらも、情報量を最小限にして、消費者への謝意に特化する。広告は新聞紙面でも展開されたが、SNS上は、包み隠さない「誠実さ」への好意であふれた。放送初日がエイプリルフールだったこともあり、「ネタかと思った」との反応もふくめて、あまりネガティブな反応は見受けられなかった。このCMが放映されたのは、両日あわせて3回のみだったが、視聴者に強いインパクトを与えたようだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら