薄皮シリーズ「5→4」変更の発表が"失敗"である訳 消費者とのコミュニケーションにエモさが欠けた
同じく長年愛されている駄菓子「うまい棒」(やおきん)も今年4月、発売以来42年間守ってきた希望小売価格を10円から12円(いずれも税別)へ引き上げた。しかし、ツイッターや新聞で「なくなっちゃうほうが、悲しいから」とのキャッチフレーズをあしらった広告を展開すると、好意的に受け止められた。
比較的誠実な対応も、宣伝のチャンスを逃した
薄皮パンがガリガリ君になるには、どうしたら良かったのか。今回の事例はまだ、「1月出荷分から~」と事前に告知しているだけ、発表すらない「ステルス値上げ」と比較すれば、誠実な対応と言える。
ネットメディア編集者として10年近く、企業と消費者のコミュニケーションを見てきた筆者からすると、近ごろは「今後の付き合いも期待できるのか」といった未来志向の視点に、重きが置かれているように思える。値上げ後の関係性はどうなるのか、私たちを見捨てたりはしないだろうか? といった、「エモさ」がカギとなる。今回の薄皮シリーズの(実質的な)値上げ発表には、比較的誠実ではあったものの、未来志向な「エモさ」が欠けていた。
日常生活を送っていれば誰しも、物価高を肌で感じている。メーカーに企業努力を求めるのが結果的に自分たちの首を絞めることにつながるのも、少なくない人がわかっている。ゆえに、メーカーが「察してくれ」と開き直るのは簡単だが、既定路線であっても「そこをなんとか」と感じるのが人情というもの。完全には納得してもらえないとしても、理解を求めようとする姿勢が見えれば、多くの消費者は溜飲を下げるものなのだ。
その点、「25年間の踏ん張り」に焦点を当てた、ガリガリ君は好印象を残した。いつまた、値上げするかはわからないが、簡単にはしないはず。そうした期待がプラスに働いたと言えるだろう。実は赤城乳業も、今年9月出荷分から、箱入りの「ガリガリ君」マルチタイプを値上げしている(希望小売価格:税別350円→380円、スティックタイプの価格は70円のまま据え置き)のだが、さほど騒がれなかった理由は、この辺りにもありそうだ。
原材料やエネルギーコストの高騰は、消費増税での値上げと違って、まだ変動要素がある。あまり希望を持たせるのも考えものだが、たとえば「また5つそろって、お会いできる日を願っております」のようなコピーを添えて発表する、表現手法もあったのではないか。多くの消費者に愛されている商品だからこそ、消費者の感情面にも応えていくのも重要なことだろう。
「モノ消費」から「コト消費」へ移行しつつある昨今、菓子パンもまた、ストーリー化できれば、物価高をチャンスに変えられるはずだと、筆者は期待している。
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