野口聡一解説、宇宙にある「大量のゴミ」衝撃実態 宇宙活動の負の遺産・スペースデブリとは

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大小さまざまなデブリは宇宙ステーションや人工衛星と同じ軌道を回り、宇宙ステーションに避ける動作をさせたり、衛星に衝突して壊したりするリスクを持っています。

私たち宇宙飛行士が滞在する国際宇宙ステーション(ISS)でも、デブリ回避のためにエンジンを噴射する対策が行われることは珍しくありません。

ISSをいつでも離脱できるように、宇宙船の近くに避難することもあります。ISSの通常の業務は中断してしまいますが、衝突する2つの物体の相対速度(一方から見たもう一方の速度)は、秒速15km(時速約5万4000km)に達することもあり、最悪の事態を想定してデブリ回避を最優させなければならないのです。2022年もこうしたISSのデブリ回避活動がNASAのサイトで何度も報告されています。

ISSはこうしたデブリ回避のため、また軌道を維持するために定期的にエンジンを噴射します。これまでエンジンの役割はロシアの宇宙船「プログレス」が担ってきましたが、今年からはアメリカの民間補給機「シグナス」でも可能になりました。

また、史上初めて民間宇宙船として宇宙飛行士をISSに送ったスペースXの「クルードラゴン」に続いて、ボーイングの民間宇宙船「スターライナー」が開発中です。このスターライナーもISSを守るエンジンとしての役割を持っています。デブリ回避のためのエンジン噴射は起きないに越したことはないのですが、万が一のために二重三重に備えられているのです。

スペースデブリはなぜ増えた?

スペースデブリの問題については、1970年代からすでに指摘されていました。

たとえば、1978年にNASAのジョンソン宇宙センターのエンジニアであったドナルド・ケスラーさんが、ロケットの残骸や稼働していない人工衛星などが軌道上に増えすぎると、残った燃料の爆発などからバラバラの破片になり、さらに破片同士が衝突し……と連鎖的にデブリがデブリを生んでカスケード的に数が増えていく現象を予測する論文を発表しました。

ある臨界点を超えると人為的にデブリの数をコントロールすることができなくなり、人工衛星を打ち上げたり宇宙飛行士が宇宙ステーションに滞在したりといった活動ができなくなってしまいます。この状態がいわゆる「ケスラー・シンドローム」と呼ばれるものです。連鎖衝突そのものをケスラー・シンドロームと呼ぶわけではないのです。

ケスラー・シンドロームは、最悪の事態の予想ですから、まだその状態には至っていません。そうなる前にデブリの数をコントロールしようというのが世界の宇宙活動の大切な目標です。

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