ウーバーイーツ配達員「労働者認定」埋まらない溝 団体交渉は認められたが労基法の雇用に当たらない

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<週末2日のみ稼働>
1日の稼働時間は、9:00~20:00(休憩1時間の実働10時間と想定)
<1日の平均配達報酬>
配達回数:30回(3回/時間×10時間)
配達単価:500円
500円×30回=15,000円
<1か月の報酬>
1日の配達報酬:15,000円
月間稼働日数:8日
15,000円×8日=120,000円

1日中フル稼働する必要がありますが、本業の収入プラス約12万円です。この働き方をしてしまうと、休日が無くなってしまい体力的にもハードになると思われます。

<平日仕事後に5日稼働>
1日の稼働時間は、19:00~22:00 実働3時間(休憩なしの実働3時間と想定)
<1日の平均配達報酬>
配達回数:6回(2回/時間×3時間)
配達単価:500円
500円×6回=3,000円
<1か月の報酬>
1日の配達報酬:3,000円
月間稼働日数:20日
3,000円×20日=60,000円

配達回数は、1日6回を想定していますが夜食時間と重なりますので6回以上の稼働は可能です。週末に休暇を取りつつ平日の夜に副業というパターンです。多くの配達員はここで紹介したシミュレーションに近い報酬を稼いでいるものと思われます。

配達員の労働環境は改善できるのか

一方、こうした労働環境について、ウーバーイーツの配達員が改善を訴えた場合にどうなるか。団交を重ねてもなかなか両者の溝は埋まらない可能性が低くありません。気になるのは、都労委が、ウーバーイーツ配達員について労働基準法上の雇用に当たるかどうかについては「判断していない」(都労委担当者)点です。

労働基準法は、働くうえでの最低基準のルールを定めています。賃金や労働時間、休暇などの雇用契約が労働者側が不利な立場に陥らないよう、労働者の生活を守ることを目的とした法律です。たとえば東京都の最低賃金は今年10月から時給1072円となっていますが、現時点でウーバーイーツの配達員はこれは適用されません。

ウーバーイーツの配達員は全国13万人(同社発表)と言われています。対して、ウーバーイーツユニオンは30人です。運営会社はウーバーイーツユニオンとの団交には応じなければいけませんが、ウーバーイーツユニオンの加入率が上がらない限り強い交渉権は生じ難いということも課題となるでしょう。

尾藤 克之 コラムニスト、作家、著述家

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びとう かつゆき / Katsuyuki Bito

東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。

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