「奨学金240万円」26歳女性が悩む"この先の仕事" 実家は超貧乏、お金の呪いからは解放されたが…

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「母は看護の専門学校を卒業しているにもかかわらず、看護師以外の仕事では高卒扱いになるようで、『高卒では生きていけない』と、昔から言われて育ってきました。また、私は難関大学を目指せる特進クラスに所属しており、しかも英語は全国模試でもかなり上位に食い込んだこともあるので、先生からも『近くの短大ではもったいない』と言われていて。そのため高校2年生のときから、奨学金を借りて国立大学に進むことを目標にしていました。『今、苦しくて将来楽になるか?』と『今、苦しまずに一生苦しむか?』の2択を突きつけられて、前者を選んだというわけです」

山野さんは家の経済状況を考え、模試でA・B判定を取り、「寮」と「授業料免除」がある国立大学だけを目指して必死に勉強。当然、学習塾などには通えないが、努力の甲斐もあって、西日本の国立大学に現役で合格することができた。

「貧乏カーストの頂点」だと感じた理由

国立大学に全額免除で合格した山野さんだが、入学金までは免除されず、その分は母親が教育ローンを借りてくれた。また、いくら学費がかからないとはいえ、奨学金を借りることは大前提だった。

そこで、第一種奨学金を毎月5万円借りることにしたのだが、入学後、自分が「所得連動返還型無利子奨学金」の対象者に選ばれていることに気づく。

日本学生支援機構(JASSO)のホームページによると、「所得連動返還型無利子奨学金」の制度は2012年から始まったようで「学ぶ意欲と能力がありながら経済的理由により学業を断念することのないよう、家計状況の厳しい世帯の学生・生徒を対象として、奨学金の貸与を受けた本人が、卒業後に一定の収入を得るまでの間は願い出により返還期限を猶予することで、将来の返還の不安を軽減し、安心して修学できるようにすることを目的」としている。

ポイントは2つ。「経済的理由により学業を断念することのないよう」という一文があるように、この制度はとくに世帯年収が低い家庭の者が選ばれること。そして、JASSO側が学生を選ぶことだ。

「特に私から申請したわけではありません。別の大学に通う、私と同じぐらい貧しい家出身の友達も奨学金を借りていて、その子もたまたま同じα型だったので、自分たちは特殊例であることを知りました。

該当者が少なすぎて、入学後の説明会でもこの制度については、一切説明されませんでした。そこで改めて大学の奨学金担当の職員に聞くと『この制度は、家がとくに貧乏な人向けに作られたんです。うまく就職できなかった場合は一生貧しいままかもしれない。そんな状況で奨学金を返済しようとすると、命の危険にかかわる……ということです』と説明されました。そこから、友達とは自分たちのことを『貧乏カーストの頂点』と呼ぶようになります(笑)」

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