大人になった「ビリギャル」が悟った受験する意味 勉強って「自分のため」にするものじゃない

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私は勉強って「自分のため」にするものじゃないと思っている。だって、自分ひとり生きていくだけなら、よくわかんない数式や化学式や、昔の法律がどうだったかとか死んだ侍がどう戦ったかとか、そんな知識別にいらない。そんなの知らなくたって、生きている人はたくさんいる。

でも、もし、私にいつか子どもが生まれたとして、その赤ちゃんは、何もできない状態で生まれてくる。うんちもふけない。ごはんも自分で食べられない。服も着られないし歩けない。周りの大人が全部、やってあげないと生きられない。つまり私に、経済力や知識、生きる力がないと、この子を守ることも、生かすこともできない。

大切な誰かを守るために勉強する

そして、親というのは、我が子を、自分の命にかえてでも守りたいと思ったりするもんなんじゃないかなぁ、と想像している。自分にいつか、子どもに限らず、命にかえてでも守りたいものができたときに、その存在をしっかり守る力の土台になるのが、「生きた知識」で、それを得るためにするのが、「勉強」なんじゃないか、と思う。

だからやっぱり、勉強って自分のためにするんじゃない。「誰かのために」するものなんだと、私は思っている。

ビリギャルが、またビリになった日 勉強が大嫌いだった私が、34歳で米国名門大学院に行くまで
『ビリギャルが、またビリになった日 勉強が大嫌いだった私が、34歳で米国名門大学院に行くまで』(講談社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

学校で、私たちは多くの知識という名の武器を手にする。そして社会に出たら、その知識とスキルを、何かを生み出したり、誰かを幸せにしたり楽させてあげたりできるものに使う。それに対しての「ありがとう」の表現としてお金のやりとりがうまれる。それが、働くってことなのだと、私は思っている。

「勉強する」は、暗記じゃない。テストのために覚えて、テストが終わったら忘れちゃうものなんて、生きた知識とはいえない。それらは武器にも盾にもならない。

いつか、誰か、守りたいものができたとき、誰かを助けてあげたいとき、社会の不条理に気づいたときに、それを解決したいと思ったときのために、備えておくためにするのが勉強だ。

子どもたちは、大人が思っている以上に色々考えている。意味や、目的を探している。薄っぺらい言葉なんかじゃ、子どもたちの心は動かせない。そして彼らは、私たち大人を通して、社会とか、大人になるってなんなのかをじっと見ている。

全てにちゃんと意味がある。ひとつひとつちゃんと。大人こそ、そこに向き合うべきなのだと思うのです。そしてくどいけど、私たち大人が学ぶことが、学びを楽しんでいる姿が、なにより一番ちゃんと子どもたちに伝えられると思うのです。大切な、メッセージを。

小林 さやか ビリギャル本人/コロンビア大学教育大学院留学中

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こばやし さやか / Sayaka Kobayashi

『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴・著/KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代学年ビリを経験し、高2の夏に小学4年生レベルの学力しかなかった。高2の夏、塾講師・坪田信貴氏との出会いを機に、慶應義塾大学の現役合格を目指すことになる。結果、1年半で偏差値を40上げて、慶應義塾大学に現役で合格を果たした。卒業後は、ウェディングプランナーとして従事し、その後フリーランスに転身。2019年4月より、学習科学の研究のため大学院に進学、21年に修士課程を修了。2022年秋から米国コロンビア大学教育大学院の認知科学プログラムに留学中。

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