日本の高1が妙に解けない「科学の問題」に見る盲点 日本の教科書には載っていない大切なこと

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日本の理科教育で使われる教科書には、わかったことしか書かれていない点が問題です(写真:Sweet/PIXTA)
私たちの生活を便利にしてくれる科学技術。その進歩とともに、身近なところで「ワクチンは打ったほうがいいのか? 打たないほうがいいのか?」などと今までにない判断を迫られることも増えてきている。
そのような現状をふまえ、エセ科学に踊らされないための科学リテラシー(科学的な知識を社会のためにどう上手に使えばいいのかを考える能力)がますます重要になってきていると強調するのは、東京大学名誉教授の石浦章一さん。『日本人はなぜ科学より感情で動くのか』を刊行した石浦さんに、科学リテラシーを身につけるコツについて話を聞いた。

日本の教科書は事実しか書いていない

日本の理科教育で使われる教科書には、わかったことしか書かれていない点が問題です。

例えば、原子力について日本の高校の教科書を見ると、最初はエネルギーと資源についてです。簡単にその意味については書いてあるけれども、数字が出てきません。次に書いてあるのは、原子核はどういうものでできていますとか、同位体とは何か、原子量や原子核の崩壊とは何かなど、試験に出るようなことしか出てこないのです。

つまりは事実の羅列だけで、一番大切な「原子力を使うということは社会にどういう意味を持つか」ということが、まったく理科や物理の教科書で触れられていないのです。

ところが、イギリスの中高の教科書での原子力についての説明を見ると、エネルギーにはいろんなエネルギーがあります、というところまでは日本と同じですけれども、その先が違います。

身の回りの放射線についての説明をしたうえで、それが健康にどういう影響を及ぼしているかということから入っていき、原子内の変化、原子力、放射性廃棄物について説明しています。ちゃんと、中学校・高校の教科書で放射性廃棄物はどう保管したらいいかについても言及しています。ずっと放射性物質を使っていたら廃棄物がいっぱい出ます。そこで将来、エネルギーをどうしたらいいでしょう、ということまで書いてあるのです。

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