日本の高1が妙に解けない「科学の問題」に見る盲点 日本の教科書には載っていない大切なこと

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問3の正解は、「太陽からの放射エネルギーが一定だったかを調べる必要がある」です。

日本の生徒はこういうことが考えつかないんですね。ということは、やはり教育のどこかに問題があるということになります。ただ知識を調べたり、式を覚えたりするだけではなく、いろんな方面から考えていくという思考が日本の生徒はできていないのではないか、とOECDから言われているのです。

これは要するに、日本の理科教育に問題がある、と指摘されたということです。

理科教育でもっとも大切なこと

では、私たちは理科教育で何を教えなければいけないのでしょうか。

大切なことはいっぱいあって、皆さんもよくご存じのように、科学の面白さ、実験の内容や素晴らしさ、不思議さ、怖さ、もそうですね。科学には怪しいところもありますということも言わなければいけないし、科学を研究している研究者も、全部の事実を隠さないで説明しなければいけません。もっと根本的には、科学リテラシーとは何かということや、今の科学がどれくらい進んでいるかという点も説明する必要があります。あと大切なのは確率の考え方です。

「事故が起こる確率はどれくらいか」や「放射能をどれくらい浴びるとどれくらい危険か」などという確率の勉強をしっかりしないといけません。同時に、エセ科学と呼ばれる怪しい科学が必ず出現しますから、それについても勉強しないといけません。そこで大切なのが、もう一度振り返って違う角度から考えることです。

例えば以前、安全保障関連法案が国会で審議されたときに、将来的な徴兵制度の導入につながるのではないかという心配の声があがったことがありました。徴兵制度とは、必ず軍隊に入らなければならない制度で、例えば韓国では男性は2年間も兵役を務めなくてはいけません。そんなことはとんでもないことだと、日本国内では大反対されました。

でも、こういう事実をご存じですか。昔、アメリカの南北戦争時の北軍では、お金を払えば身代わりを雇ってもいいことになっていました。つまり、北軍に全員が参加しなくてもよかったんです。お金持ちのカーネギー(鉄鋼王)などは、お金を払って軍に入らなかったのです。身代わりを雇ったのです。お金を使って徴兵を免れたわけですから、そういう話を聞くと、この人たちはずるいと皆さんは思いませんか?

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