「アマゾン年会費」は米国の1/4、日本だけ安い真因 50年来の円安水準とはどういうことなのか

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ビッグマックの価格は、多くの商品のなかのひとつであり、ビッグマック自体も大きさや重さが国によって遠います。しかしながら、この約20年間でこれだけビッグマックの価格差が広がっていることを考慮すると、日本は物価が安い国になりつつあると言えます。

このような「安いニッポン」の兆候は他の商品からもみられます。例えば、米アマゾン・ドット・コムの会員制サービス「アマゾンブライム」の年会費は日本では4900円ですが、アメリカでは139ドル、イギリスでは95ポンド、ドイツでは89.90ユーロとなっています。為替レートを1ドル=140円とすると、アメリカの年会費は1万9460円なので、日本の年会費はアメリカの約4分の1となっています。

また、アメリカでも展開している日本のラーメン店チェーン「一風堂」のラーメンは国内だと790円ですが、アメリカでは17ドルとなっています。先ほどと同様に1ドル=140円換算すると、2380円となります(なお、これにさらにチップが10〜20%加わるので、最終的な支払い金額はもっと高くなります)。こういった例は、円が実質実効為替レートで非常に安くなっているということを表しています。

為替レートは物事の「結果」であることが多い

はたして、このような状況はどう考えればいいのでしょうか? ここで重要なのは、為替レートは物事の「原因」であることよりも、「結果」であることのほうが多いということです。為替レートはさまざまなことの結果としてその値が決まります。ですから、「円安がいい、悪い」という議論だけでは話は進まず、むしろ、なぜ、今のような為替レートになっているのかを考える必要があります。

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そう考えると、日本の実質実効為替レートの大幅な円安の要因は、為替そのものよりも、物価の動きが大きいと考えられます。たしかに、足元では円ドルレートの動きからもわかるように急速に円安が進んでおり、その背景には日本銀行の金融政策があります。

つまり、実質実効為替レートの動きの、ある部分は日本銀行の政策によって説明ができるでしょう。しかし、実質実効為替レートは1990年代半ばから低下傾向にあり、この動きは物価の動きによっても説明されます。

この25年間の物価上昇率をみると、日本ではほぼ0%だったのに対して、アメリカでは毎年2%程度となっています。賃金についてもこの25年間、日本はほぼ変わっていないのに、アメリカでは4割ほど上昇しています。「日本では物価も賃金も上がっていないのに、アメリカでは物価も賃金も上がっている」。これは裏を返すと、日本の実質実効為替レートがたいへん円安になってきているということになります。

宮本 弘暁 元国際通貨基金(IMF)エコノミスト

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みやもとひろあき

慶応大学経済学部卒業、米ウィスコンシン大学マディソン校で博士号(経済学)取得。国際大学教授、東京大学特任准教授を経て現職。専門は労働経済学・マクロ経済学・日本経済論。著書に『労働経済学』(新世社)がある。

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