BBSの鍛造ホイールが圧倒的な信頼を集める理由 実は日本製、知られざる製造現場に潜入してみた

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そんなBBS鍛造ホイールはどのように製造されているのか? 普段はトップシークレットだが、ある関係者から「トヨタのスポーツブランド『GR』のブランド拠点『GRガレージ』に在籍するGRコンサルタントの有志が工場見学を行うので、一緒にいかがですか?」というありがたいお誘いを受け、同行させてもらった。

見学したのはBBSが取り扱うすべての鍛造ホイールの開発・製造が行われているBBSジャパンの「高岡工場」(富山県高岡市)。外から見ると、いわゆる日本によくある工場……といった雰囲気である。

BBSの要の一つである「鍛造工程」は、5000トン×2、6500トン、7000トン、8000トン、9000トン、さらには2019年に導入された1万2000トンの鍛造ホイールプレス機を所有するが、どのプレス機も連日フル稼働だ。

刀鍛冶のように何度も打ち付ける製法ではない

この巨大なプレス機で干し貝柱のようなアルミ素材(ビレット)を高い圧力で押しつぶす「鍛造」を行う。ちなみにBBSでは4分の1以下の高さになるまで押しつぶすことにこだわっている。その理由は強靭な鍛流線(アルミの金属組織が均一に並び、木目のような繊維の並び)のためだ。鍛流線がきれいにつながると強さだけでなくしなやかさも生むからだ。このしなやかさは靱性(=粘り強さ)と呼ばれる。

ちなみに鍛造と言うと刀鍛冶のイメージがあり、何度も「ガッチャンガッチャン」とプレスが動いていると思っていたのだが、実際の鍛造工程の動きは非常にゆっくりで「ジワーッ」と押しつぶしていくのが印象的だ。

ちなみに他社の鍛造アルミホイールのカタログを見ると「●●●●トンの鍛造プレス機で……」と誇らしげに記載されているが、BBSはそれが自慢のポイントではなく、その作業工程にあると言う。

われわれの目には何気なく鍛造プレスをしているように見えるのだが、実は圧力、タイミング、回数、時間、温度はもちろん、剥離剤(金型とビレットが固着しないため)の塗付量や塗付の仕方など細かい指示に沿って行われている。実はこれこそがBBSがBBSたるための門外不出のレシピで、仮に別のメーカーが同じ鍛造プレス、同じ型、同じビレットを用いて製造をしたとしても、BBSと同じ性能を出すことはできないそうだ。

次ページ複数回のプレスを経て、あのクロススポークデザインに
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