この難題を高次元でバランスさせるアルミホイールの製法が「鍛造(たんぞう)」だ。金属を溶かして固める製法の「鋳造(ちゅうぞう)」に対して鍛造とは、金属素材をたたいて金属組織の粒子を緻密かつ均一にさせることで材料強度を上げる加工法で、日本刀の製法としても有名である。そんな鍛造をアルミホイールの世界でメジャーにしたのがBBSである。
その歴史は古く、1970年にドイツ人のハインリッヒ・バウムガルトナーとクラウス・ブラントが立ち上げた自動車部品製造会社で、BBSの名は2人の頭文字と創業地(シルタッハ)から名付けられた。
創業当初のBBSはFRP製エアロパーツや鋳造アルミホイールを製造していたが、1980年代に日本の高品質な鍛造アルミ製品の製造技術に目をつけ、1971年に富山県高岡市に設立されていたワシマイヤー株式会社と提携し、1983年に「日本BBS」(現BBSジャパン)が発足した。海外メーカー品のようなイメージを持っている人もいるかもしれないが、BBSのアルミホイールは日本の会社がつくっている製品なのだ。
フェラーリF1チームに供給も
ドイツのマイスターと日本の職人のコラボレーションにより1984年に3ピース鍛造アルミホイールを発売。さらに1985年に3ピースよりも技術的難度の高い1ピース鍛造アルミホイールを発売し、SEMAショー(北米)で技術革新大賞を受賞した。それを境に販売が爆発的に増加し、現場が混乱するほど需給が逼迫したそうだ。日産自動車「スカイライン」(R31)のオプション設定を振り出しに、国内外の自動車メーカーへの純正納入も開始された。
鍛造アルミホイールのパフォーマンスはレースフィールドで実証され、国内外のメジャーレースで数多くの勝利を獲得している。その中でも有名なのは世界初となる鍛造マグネシウムホイールのフェラーリF1チームへの供給だ。チームからのオーダーは「マグネシウム鋳造ホイール比で10%の軽量化」だったが、BBSは20%の軽量化を実現させチームを驚かせた。これらのモータースポーツシーンで培った技術はダイレクトに市販ホイールにフィードバックされ、商品化されている。
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