右派思想を持った文豪ドストエフスキーを政治的に利用しようとするプーチン。だが両者には、絶対的に相容れない点もある。
「父殺し」の小説と現代ロシアの大いなる父
『カラマーゾフの兄弟』は、端的にいえば父殺しのミステリーだ。事件の舞台はロシアの片田舎だが、この「父殺し」というテーマが、物語の書かれた19世紀のロシア、さらには現代でどのような普遍性を持つのか。それが問われなくては、今この作品が読まれる意味はない。
19世紀のロシアにおける「大いなる父」といえば、アレクサンドル2世だ。1861年の農奴解放によって「解放王」の異名もある名君主だが、性格的な弱さもあって改革が不徹底なものになり、抑圧されてきたロシアの民衆の不満は逆に膨れ上がって爆発する。それが60年代後半から70年代のテロの時代につながっていく。『カラマーゾフの兄弟』はこうした時代に1つの問題を突きつけた。
視点を現代のロシアに移すと、プーチンという大いなる父がいる。世界を混沌の中に陥れているプーチンだが、彼の支持率はまだ7割もある。




















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