戦況が膠着状態にあるロシア・ウクライナ戦争。ロシア苦戦の背景を読み解くうえで注目すべきが、19世紀の古典『戦争論』で説かれた戦争の「三位一体論」だ。
12月5日発売の『週刊東洋経済』12月10日号では「武器になる名著」を特集(アマゾンの予約・購入ページはこちら)。戦争や感染症、ポピュリズムの台頭など、混迷の時代にこそ読むべき古典を紹介している。
ロシアのウクライナ侵攻が長引いている。戦況は膠着し、ロシア側は戦術核の使用もちらつかせる。そんな今、読むべき名著は何か。軍事アナリストの小泉悠氏に聞いた。
人が戦争を起こす3つの動機
まず推薦したいのが『戦史』。著者は古代ギリシャのペロポネソス戦争で、アテネ側の将軍としてスパルタ軍と戦ったトゥキュディデス。彼による、この戦争の回顧録だ。
驚くのが、約2400年前に書かれたにもかかわらず、記述が極めて科学的、客観的であること。「この記述は合理的に考えて信じがたい」といった、現代の歴史家のような目で過去を分析している。
極力感情を排して書かれているのに、読み通すと壮大な叙事詩として読めるという、不思議な魅力がある。
『戦史』で有名なのが、戦争の動機を「利益」「恐怖」「名誉」とするテーゼだ。戦争の原因としては、経済的利益を考えるのが一般的だろう。だが時に、人間は利益がなくても戦争を始める。
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